いわゆる「8050問題」などの深刻さが指摘されるなか、支援策の拡充に向けた検討が進められている。
多様化・複合化している地域の福祉ニーズに市町村がより柔軟に対応できる環境を整備するため、厚生労働省は新たな制度的枠組みを創設する方針を固めた。
介護、障害福祉、子育て支援、生活困窮者自立支援など、既存の制度の範囲内だけに使途が限定されている国からの交付金について、必要に応じて横断的に活用できるようルールを改める。今月5日に開催した有識者会議に提示した報告書の素案に、こうした考えを盛り込んだ。
来年の通常国会に関連法案を提出する計画。早ければ2021年度にも実施できるよう調整していく方針だ。
「我がこと・丸ごと」がキーワードの「地域共生社会」の実現に向けた施策の一環。従来の縦割りを超えて対応する「断らない相談」などの普及につなげる狙いがある。
現行のルールは融通が利かず取り組みにくい、といった声が自治体などからあがっていた。例えば、窓口機能を担う地域包括支援センターへの交付金が包括の業務に対してのみ支給されているため、子育てや生活困窮などの相談に職員が一体的に応えられないケースがあるという。
厚労省は現場の仕事を妨げるこうした障壁を取り除く考え。実際にどんな相談体制を敷くかは個々の市町村が実情を踏まえて決めていく。法改正が実現すれば、包括のケアマネジャーや社会福祉士などの自由度を上げることも可能となる。
今後、地域の福祉ニーズはさらに複雑化しながら増加する見通しだ。実際に支援にあたる人材をいかに確保していくかなど、行政が対応すべき課題は多い。我々ひとりひとりも、より暮らしやすい地域を作るために何ができるのか、それぞれ考えていくことが必要なのかもしれない。