2023年12月7日 乱れないヘアスタイリング材料 ~湿気を取り込み形状記憶効果が呼び起こす~

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は、日本ロレアル(株)と共同で、湿度に応答して形状記憶効果を発動するポリマー材料を開発した。この研究成果は、髪の毛に塗って乾かすだけで高湿度環境でも望みのヘアスタイルをキープできるスタイリング材料へと応用できる。

ヘアスタイルは個人の自己表現や自信に大きな影響を与えるので、効果的で機能的なヘアスタイリング製品の需要が高まっている。一方で、毛髪は水分の影響を受けやすいため、多くの人が雨の日や発汗時などのヘアスタイルの崩れに悩みを抱えている。

湿度への耐性を与えるヘアスタイリング製品として、一般にヘアスプレーやジェルが知られているが、これらのほとんどは髪の毛に直接コーティングを施すことで髪の毛を湿気から保護することを目的としており、湿度の影響を軽減するに留まっている。

そこで、高湿度環境下でもヘアスタイルを維持できる新たなスタイリング用材料の開発が望まれていた。

研究チームは、髪の毛を湿気から保護するのではなく、湿度に晒された時に形状記憶効果を発動する新たなスタイリング用ポリマーコンポジット材料を開発した。

この効果は、ポリビニルアルコール(PVA)と天然由来のセルロース微結晶(CM)との水素結合を介したネットワーク形成によって発現するのだが、この水素結合が水分子を取り込んでも両者の結びつきを保持できる性質を利用している。

何もコーティングしていない髪の毛と比較して、PVA/CMコンポジットはCM量依存的に高いスタイリング効果を示すことが分かった。また80%湿度条件下に6時間晒されると髪束は広がるが、PVA/CMコンポジットをコートした髪束は形状回復が誘起され、もとのスタイリング形状へと近づくことが明らかとなった。

以上の結果から、今回開発したPVA/CMスタイリング材料は、湿度に晒される髪の毛の広がりを抑制するとともに、湿度を利用してスタイリング維持を向上させるという興味深い性能を示した。さらに、コートしたPVA/CMコンポジットは、温水(42℃)やシャンプーで簡単に洗い流すことができた。

今回の研究より、湿度が誘起する形状記憶現象のメカニズムが明らかになったことで、湿度に対してより効果の高いヘアスタイリング方法を提案できる可能性がある。

今回の研究は、NIMS高分子・バイオ材料研究センタースマートポリマーグループと、日本ロレアル(株)リサーチアンドイノベーションセンターの研究チームによって行われた。

 


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