大きな地震や台風などの災害時、高齢者施設の入居者を避難させる際に活用できる「非常用 持ち出し袋」を三井物産が開発した。
日本認知症グループホーム協会が監修。介護現場の視点を反映させる観点から助言・協力した。三井物産が運営する高齢者施設向けのECサイト「このいろ」で、今月から販売がスタートした。
「災害はいつ起きるかわかりません。その時に備えていきましょう」。グループホーム協会の災害対策委員会の近藤るみ子委員長はこう呼びかけている。
新たな「非常用 持ち出し袋」は、「入居者用」と「職員用」の2種類。グループホームのユニットを想定した10袋セット(入居者用9、職員用1)なども用意されている。もちろん、特養や老健、有料老人ホーム、小規模多機能、通所介護など幅広いサービスで活用できる。来年度から全ての介護サービスに義務付けられるBCP(業務継続計画)策定の具体策としても役立ちそうだ。
「入居者用」の特徴は、要介護の高齢者らの特性を十分に考慮していること。衛生用品が多く、5回分の簡易トイレも含まれる。咀嚼・嚥下力の衰えを踏まえ、水分量で形態が変わる備蓄食を採用。リュックにも工夫があり、常備薬、とろみ剤、おむつなどを分けて保管できるようになっている。衛生用品や備蓄食は、約5年間の長期保存が可能だ。
一方の「職員用」は、入居者を引率する負担を減らして安全な避難の実現をサポートする設計。「入居者用」の中身に加えて、ヘッドライトやプラスチックグローブ、スマートフォンの充電器、携帯ラジオなどが盛り込まれている。
三井物産は今回の「非常用 持ち出し袋」について、「総合商社の調達力を活かし、企画から納品まで一括して提供することで、個別施設の企画の負担、調達費用の軽減を実現した」と説明。グループホーム協会の宮長定男常務理事は、「グループホームはもちろん、高齢者施設、障害者施設でも活用しやすい。避難に必要なものが揃えられているのに軽く、これなら高齢者でも楽々背負えて移動できる」とし