干ばつが地球温暖化の影響により今後どのように変化していくかについての知見は、地球温暖化に対する長期的な対策を検討するために重要な判断材料となる。特に水資源や農業、エネルギー分野では、従来の統計値や経験が適用できなくなってしまう時期を把握しておくことが重要。そこで、国立環境研究所、東京大学、韓国科学技術院などの国際研究チームは、数値モデルを用いて河川流量の全球将来予測データを解析し、干ばつが発生する頻度を調査することで、過去最大を超える干ばつが何年も継続して起こるようになる、つまりこれまでの「異常」が常態化してしまう時期を、世界で初めて推定した。
研究グループの研究結果によると、地中海沿岸域や南米南部など特定の地域では、今世紀の前半もしくは半ば頃までに、過去最大の干ばつを少なくとも5年以上継続して超える時期を迎え、「これまでの異常」が珍しいものではなくなる可能性が高いことがわかった。
また、温室効果ガスの排出削減を強く進めた場合でも、今後数十年のうちにそのような記録超えが常態的になる地域が複数あることが示唆されている。
一方で、温室効果ガスの排出削減を進めた方が、継続的な記録超えを迎える時期が遅くなる、もしくは継続時間が短くなることも示された。これらの結果は、脱炭素社会の実現に向けた緩和策推進の重要性とともに、特定の地域では今後数十年程度の間に適応策を効率的かつ迅速に進める必要があることを示している。
この研究の成果は、6月28日付で日付で学術誌Nature Communicationsに掲載された。