2022年6月22日 【物材機構】白い鉄錆で安全にUVカット 酸化チタンを代替する日焼け止めクリーム素材として期待

□ポイント■

〇紫外線を吸収する酸化鉄系材料を開発

〇安全性に懸念が残る現UV防止剤の代替品に

〇空気清浄機等の光触媒への応用も視野

 

国立研究開発法人物質・材料研究機構、北海道大学、広島大学で構成する研究チームは、紫外線(UV)を吸収する無色の二核鉄イオン(図の紫色の球、不安定)を多孔質シリカ(二酸化ケイ素)で安定化させた酸化鉄系材料を開発した。この研究成果は、今後性能を高めることで、安全性に懸念が残る酸化チタン(化粧品や日焼け止めクリームのUV防止材)の代替品として期待できる。

酸化チタンは白色顔料やUV防止材(主に反射させ無害化する散乱材)、光触媒などとして、化粧品や日用品、食品、医薬品、建材等の分野で幅広く利用されているが、2020年にEUによって発がん分類区分に指定されたのを皮切りに、フランスでは食品利用が禁止されるなど、利用・製造が制限されつつある。

国内では使用は制限されていないが、現在の酸化チタンへの依存度と市場規模を鑑みると、酸化チタン代替材料の開発は重要な社会課題といえる。

水を配位した二核鉄イオンは、赤色顔料等として食品にも利用されている酸化鉄とは異なり、UVを吸収することで酸化チタン以上の光触媒作用を示すが、合成も難しく、また不安定であることが知られている。二核鉄イオンは酵素やタンパク質中には遍在するため、その安定化には古くから興味が持たれていたが、生成物の安全性や安定性には課題が残っていた。

今回、研究チームは、同イオンを多核化・酸化鉄への結晶化が制限される微細構造の多孔質シリカ粉末(白色)内部に埋め込むことで、安定化させることに成功した。こうして得られた白色のUV吸収材は、有害な光触媒作用が低減され、この粉末を用いた日焼け止めクリームは、現行の酸化チタンに匹敵する性能と安定性を示した。

今回、酸化チタンよりも安全な物質で白色のUV防止材(吸収し無害化する吸収材)を合成できる指針が得られ、今後、化粧品や日焼け止めクリームへの応用が期待できる。また、安定化に用いる多孔質シリカの微細構造によっては、鉄二核イオンの高い光触媒作用を維持させることも可能なため、研究チームでは、空気清浄機等の光触媒への応用を目指すこととしている。


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