■ポイント□
○北極域での自然環境や先住民族の暮らしを守りながら、資源を開発したり北極海航路を利用したりするための国際法を、「汚染」「将来」など7つの項目に分けて解説している
○北極域にアクセスする全国内ステークホールダーに向けて、遵守すべき北極域の国際法について解説し、それらを理解するためのポイントと行動指針を提示している
○最近のウクライナ情勢を受けた北極沿岸国の反応や今後の国際協力への影響について、国際法の視点から解説を行っている
神戸大学大学院国際協力研究科極域協力研究センター(PCRC)は「北極を知るための国際法 ~北極域を持続的に利用するための国際ルールとは?~」のホームページを公開した。このページは北極域にアクセスする日本のステークホールダーに向けて、北極域に適用される国際法について解説し、国際的なルールに沿った行動指針を提示することを目的として作成された。
わが国を含む世界中の国々が北極域を持続的に利用するためには、北極域の自然環境を保護し、また、そこに住む先住民族の生活・文化を尊重しながら、資源を開発したり、北極海航路を利用したりするための国際的なルールが必要になる。
そのようなルールは国家間の条約・協定のように国家を法的に拘束する国際法の場合もあれば、国連決議や国際会議の共同宣言のように「ソフト・ロー」と呼ばれる非拘束的な合意の形式を取ることもある。
それぞれの国際法の地理的な適用範囲にも、北極域内に適用することを目的として作成された地域的なルールもあれば、地球規模で適用されるグローバルな国際法であるがゆえに必然的に北極域にも適用されるルールの場合もみられる。
適用される地理的範囲や拘束力が異なる国際ルールが複合的に重なっているため、多くの人にとって国際法はわかりにくい。
このため、このホームページでは、北極域を持続的に利用するために知っておきたい国際法を以下の七つのテーマに分けて、各テーマに関連する地域的及びグローバルな国際法や非拘束的合意について解説している。
①「国際法」:北極域と国際法、そして日本
②「人々」 :先住民族と人権・国際社会
③「LNG」 : 北極LNG開発と国際法
④「航路」 :北極海航路の利用と国際法
⑤「漁業」 :中央北極海での将来的な漁業
⑥「汚染」 :北極海域でのプラスチック汚染
⑦「将来」 :ウクライナ侵攻後の北極国際協力のゆくえ
北極域には、北極沿岸国側としても、北極域にアクセスして利用する側(非北極圏国)としても、守らなければならない国際法がある。その一方で、北極海航路や海洋汚染など、急激に進む北極域の環境変化に合せて国際ルールの作成が課題となっている分野も多く残されている。
自然環境を維持しつつ、世界中の国や人々が利用できる地域として北極を守っていくためには、現在適用されているルールを知った上で、これからの国際的なルールのあり方について考えることが重要。PCRCでは、「このホームページはそのための基本となる情報を提供するもの」と、利用を呼び掛けている。