長崎大学は、香り×AI×DXで『においの なんとなくを なくす』ことを目指すベンチャー企業の㈱レボーン(東京・恵比寿)と、飲酒時の呼気を従来より精緻に分析・判断するシステムの開発を目指し、加賀電子㈱、加賀ソルネット㈱、三井住友海上㈱と共同で「飲酒運転撲滅プロジェクト」を開始する。
運転前後のアルコールチェック、義務化
航空、鉄道、タクシー業などの輸送業界で、操縦や運転を伴う職務の従事者は、始業前に呼気によるアルコール検査が義務付けられている。一部では虚偽報告が行われるなど、アルコールの影響に起因する業務上の事故が絶えなかった。加えて、警察が酒気帯び運転を疑い行う呼気検査でも、酒以外の微量なアルコールを含む食べ物、飲み物や口腔ケア製品の影響によりアルコールが検出される事案など、冤罪につながるケースも発生している。
また、今年4月から改正道路交通法施行規則が順次施行されている。自動車を使用する事業所で安全運転管理者の選任が義務付けられ、安全運転管理者は運転者の運転前後のアルコールチェックが義務化される。今年10月からはアルコール検知器を用いて確認を行うことや常時有効に保持することが義務付けられる。
これらの課題を解決するためには、現行の吸気検査よりも精緻な検査が可能となるシステムの開発と新たな管理体制の構築が必要とされ、共同研究プロジェクト「飲酒運転撲滅プロジェクト」の始動に至りました。
酒の種類を判別
現在酒気帯び運転を疑い行う呼気検査に使用されているアルコール検知センサーは、呼気に含まれる酸素量の変化を検知する「半導体式ガスセンサー」、呼気に含まれるアルコールの量を検知する「電気化学式(燃料電池式)センサー」が使用されており、酒であるかは判別していない。
共同研究プロジェクトでは、一般的に飲まれている多くの種類の酒のにおいを呼気から取得し、においがどのように変化していくか、時系列でデータを取得する。これにより、呼気に含まれるにおいがビールや焼酎、ウィスキーなど「酒の種類」を判別し、飲酒後の経過時間まで推測できるようになることを目指す。
また、この共同研究プロジェクトで得られた結果をもとに、実用性を高めた携帯しやすい小型のセンサーの開発を行い、センサー、またはスマートフォンなどのアプリを介し、レボーンのクラウド上にリアルタイムで呼気データが送られ、飲酒しているかの判定を行う。
共同研究プロジェクトで得られたデータをもとに新たに開発する小型のセンサーと現在検知に使用されているアルコール検知センサーを併用することで、より精度の高い飲酒運転検知システムの開発と実用化を目指している。