2021年5月27日 【東北大】コロナ対応保健所職員のストレス「医師並み」、7割が不眠

新型コロナウイルス感染症対応に追われる保健所職員の約7割に不眠症状がみられ、半数近くが精神的に不調な状態にあることが、東北大学のアンケート調査で明らかとなった。新型コロナパンディック下で、多くの医療従事者がメンタルヘルスの問題を抱えていることは知られているが、膨大かつ多様な業務を抱える保健所職員に焦点を当てた実証的研究は、今回が国内初。保健所職員の精神的に問題を有している者の割合は、医療従事者に匹敵するものであることが浮き彫りとなった。研究グループでは、この調査を受けて、職員に対するストレスケアマネジメントの実施、職員の増員、電話相談対応の指針の提示・対策整備などの重要性が認識されることを期待。さらに、「市民らが保健所職員の抱えるストレスの大きさと保健所職員に対する相談者のマナー再考につながれば」としている。

半数以上が「心理的苦痛」

この調査を行ったのは、東北大災害科学国際研究所の臼倉 瞳助教、國井泰人准教授、大学院医学系研究科の富田博秋教授、小坂 健教授、東北大病院の瀬戸 萌医師らの研究グループ。昨年9月から11月に宮城県の保健所職員・関係者を対象にアンケート調査を実施し、メンタルヘルスの問題を抱える者の割合とともに、電話相談対応業務のなかで感じた困難の内容を明らかにした。

調査対象は、新型コロナに関する電話相談対応を行っている、あるいは行った経験のある宮城県管轄の全保健所6ヵ所の職員・関係者。メンタルヘルスの問題については、抑うつ症状、不安定症状、心理的苦痛、心的外傷後ストレス反応、不眠症状、飲酒問題を取り上げ、各評価指標に定められている基準点に基づいて、一定以上に問題を有している者(ハイリスク者)かどうかを判定した。

最もハイリスク者数が多かった指標は不眠症状で、約7割(69.6%)にのぼった。次いで、心理的苦痛が半数以上(56.5%)、心的外傷後ストレス反応が半数近く(45・5%)でハイリスクの状態であることが明らかとなった。抑うつ症状は31・8%、不安症状は17.4%、飲酒問題は18.2%がハイリスク者。この研究で示されたハイリスク者の割合は、最前線で治療にあたる医療従事者を対象とした研究で示されている数字に匹敵する高さであった。

また、電話相談対応に従事する中で最もつらかった点や困難に感じた点に関しても、自由記述回答で聞いた。苦情等の相談者への対応に苦慮していることなどが含まれる「相談者への対応の難しさ」「PCR検査の要否や紹介先の判断の難しさ」、職場の労働安全衛生やサポート体制などが含まれる「有事対応に伴う過重な業務体制」を大きく三つに分類された。

具体的には、相談者からの理不尽な叱責や攻撃や、かかりつけ病院から診断を断られた相談者への対応などでストレスを抱えたという。さらに、心配と緊張で心が休まらないが、職場内で相互にサポートする体制が整っていないことも、ハイリスク者が発生する大きな要因となっている。


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