東京医科歯科大学准教授らは、今年3月中旬から4月上旬までに、同大病院への入院・通院歴のある新型コロナウイルス感染症患者から、疫逃避型変異(E484K)を有する国内系統株の継続的な感染事例だけでなく、感染伝播性の増加が懸念される変異(N501Y)を有する英国型系統株の新たな市中感染事例も確認した。
新たな市中感染事例を明らかにしたのは、東京医歯大大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の武内寛明准教授・医学部附属病院病院長補佐、難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ助教らによる同大大入院患者由来SARS‐CoV‐2 ゲノム解析プロジェクトチーム。木村彰方理事・副学長・特任教授と貫井陽子医学部附属病院感染制御部・部長との共同解析により、解明した。
昨年11月以降、わが国では新型コロナウイルス感染症の急速な症例数の増加局面に直面しており、同年12月下旬からは、感染性が増大していることが示唆されている英国型系統株、南アフリカ型系統株およびブラジル型系統株の日本国内流入により市中流行株の変遷に影響をおよぼす可能性が懸念されている。
今年2月以降、英国系統株の市中感染事例が関西圏において急増し市中流行株の遷移が顕著に認められていることから、国内でより強固な感染拡大防止対策を講じる必要性に迫られている。
今年3月中旬以降の医歯大由来検体から免疫逃避型変異を有する系統株のさらなる感染事例を確認しただけでなく、4月上旬には感染性の増大が懸念されるN501Y変異を有する英国型系統株への感染事例が複数確認された。このことは、関西圏だけでなく関東圏でも英国系統株への遷移が起こり始めていることを示しており、国内流行株の遷移がさらに進む可能性が考えられる。
プロジェクトチームでは、「引き続き強固な感染予防対策を継続すると同時に、市中流行株の推移をモニタリングし、ウイルス流行の実態を把握することが公衆衛生上の意思決定に重要であると考えられる」としている。