東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の研究グループは、同大病院への入院または通院歴のあるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)患者から、免疫逃避型変異系統株のさらなる感染事例だけでなく、国内系統株に新規変異が認められるなど、多様なウイルス株の市中感染事例を確認した。
市中感染を確認したのは、同研究科ウイルス制御学分野の武内寛明准教授・医学部附属病院病院長補佐、難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ助教らによる入院患者由来SARS‐CoV‐2ゲノム解析プロジェクトチーム。木村彰方理事・副学長・特任教授と貫井陽子医学附属病院感染制御部・部長との共同解析により突き止めた。
昨年11月以降、わが国では新型感染症の急速な症例数の増加局面に直面しており、同12月下旬からは、感染性が増大していることが示唆されている英国型変異株、南アフリカ型変異株とブラジル型変異株の日本国内流入により市中流行株の変遷に影響をおよぼす可能性が懸念されている。
今年1月以降、英国型変異株系統株の市中感染事例が増えつつあり、また重症化率の上昇が懸念されていることから、より強固な感染拡大防止対策を講じる必要性に迫られていると考えられている。
同大ではこれまで、昨年11月下旬以降に同大に入院または通院歴のある新型感染症患者から、さまざまな変異を有する新型コロナウイルス感染症系統株の感染事例を確認した。
また、今年1月以降には、「免疫逃避型変異」を有する系統株への感染事例を複数確認。今回は、2月から3月中旬までに入院もしくは通院歴のある患者由来検体12例から、免疫逃避型変異株の感染事例を確認しただけでなく、同大でこれまで確認していない新たな変異を有する多様な国内系統株の感染事例を突き止めた。昨年11月から今年3月までの解析では、感染性の増大が懸念されるN501Y変異を有する系統株は検出されなかった。