2021年3月17日 遠隔デイ実現システムの共同研究 コロナ禍の高齢者運動機能低下防止へ(順天堂大)

順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターと富士通株式会社は、コロナ禍での高齢者の運動機能や認知機能の低下を防ぐために、遠隔デイサービスを実現するためのシステムの共同開発を3月2日に開始した。コロナ禍で通所介護サービス(デイサービス)の利用が困難な高齢者の運動機能や認知機能の低下を防ぐ遠隔デイサービスの実現に向けて、オンラインで心身の状態を精緻に把握し、運動療法や芸術療法の提供から療法中の見守りまで幅広い支援を可能にするシステムの有効性を検証するもの。

この共同研究では、運動時の動画から身体の骨格座標や関節角度などを推定するAI技術や、画面上の表情から感情などを推定する表情認識AI技術、慣性センサーのデータから歩行特徴を抽出するデジタル化技術など、高齢者一人ひとりの状態に合わせた運動療法や芸術療法に必要なさまざまな技術を組み合わせたシステムの有効性を幅広く調べる。

両者は共同研究成果をもとに、オンライン化が進むニューノーマルな時代に向け、有事の際にも高齢者が遠隔で適切なサービスを継続的かつ安定的に受けられ、健康で幸福な生活を送れる環境づくりに貢献することを目指す。

ここ数年、高齢者の認知症の増加は深刻な社会課題の一つとなっており、内閣府の調査では、2025年には65歳以上の高齢者の五人に一人は認知症を発症すると推定されている。認知症の対策として非薬物療法であるロコモティブシンドローム予防運動などの運動療法や臨床美術といった芸術療法などの有効性が示され始めており、通所介護事業者などがデイサービスとして提供している。

しかし、新型コロナウイルス感染症への感染リスクを恐れて外出を控える高齢者が増えており、デイサービスを受けられないことで運動機能が低下し、それにより認知機能の低下を招く恐れがある。こうした状況への対策として、リモートツールや動画配信を活用する取り組みは始まっていますが、画面越しに相手の状態を把握することが難しいため、一方的な情報伝達に留まってしまい、適切な療法を実施できないことが課題となっている。

順天堂高齢者医療センターと富士通は、このようなコロナ禍のデイサービスでの喫緊の課題を解決するため、オンラインでも高齢者の心身の状態を精緻に把握できる富士通のさまざまな技術により、運動療法や芸術療法の提供から療法中の見守り、療法の計画立案や計画の見直しまで、通所介護事業者によるサービス提供の継続をオンラインで幅広く支援するシステムの有効性を検証する。

共同研究は、今月末日まで実施予定で、順天堂高齢者医療センターが、同センターを受診している軽度認知障害の患者20名を対象に実施。認知機能や歩行能力などの運動機能の測定や、ロコモティブシンドローム予防運動の指導ノウハウを有する順天堂スポーツ健康科学研究科と連携し、オンライン下での運動療法および芸術療法の試験提供を定期的に行う。その際に収集した歩行データや動画データを用いて、①関節可動域児童測定AI技術、②表情認識AI技術、③歩行特徴デジタル化技術―の有効性を両者で明らかにする。

また、解析したデータに加え認知機能スコアや体組成などの各種属性データを含めて一元化し、対象者の心身の状態や各療法の効果を視覚的に捉えやすくするダッシュボード機能とその有効性を確認する。

同センターでは、この共同研究で得られた成果をデイサービスの現場課題解決に利活用できるか評価する方針。また、これまで科学的実証が難しかった各療法の認知症に対する効果を可視化し、解決することで、非薬物療法に向けたエビデンスを強化することとしている。今後は、このエビデンス基づき、順天堂スポーツ健康科学研究科との連携を強化しながら、認知症予防にむけたより効果的な療法の確立を目指す。


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