2020年11月10日 学校と保護者間の押印見直し 文科省、デジタル化推進で教育委員会に通知

菅首相の大号令を受けて、文部科学省でも、学校が保護者らに求める押印の見直しや学校・保護者間の連絡手段のデジタル化推進についての考え方・具体策を示す通知を全国の教育委員会あてに発出した。同省では、学校や地域の実情を踏まえつつ可能なところから取組を進めるよう要請している。

菅政権の誕生とともに、菅首相の意向を踏まえ、現在、政府では、デジタル時代に向けた規制・制度見直しの一環として、書面主義、押印原則などに関する官民の規制・制度や慣行の見直しを進めている。

 

双方の負担軽減にも寄与

学校においても、これまでの慣例に倣って、保護者らの確認を得ることなどを目的に、多岐にわたって学校が保護者らに対して書面による押印を伴う手続きを求めている実態が指摘されている。この押印手続きがあるが故に、学校・保護者間における連絡手段のデジタル化に移行できなかった現状もあると考えられる。

このため文科省では、各学校や地域における実情を踏まえつつ、可能なところから、押印の省略及び学校・保護者間における連絡手段のデジタル化に向けた取組を進めるよう求めている。押印の省略や学校・保護者間における連絡手段のデジタル化を進めることは、迅速な情報共有を実現するとともに、学校・保護者双方の負担軽減にも大きく寄与するとの考えを示し、教育委員会に対して、学校が円滑にデジタル化に移行できるよう、規則やガイドラインの見直しを行うなど必要な支援を要請している。

現在、学校現場においては、保護者懇談会や夏休みの補習授業への参加申込みをはじめとする軽微な内容から、児童生徒の肖像権に関する承諾やアレルギーの確認、保健調査、進路調査など、子どもたちの権利関係や機微な情報を扱う内容まで多岐にわたって、学校・保護者間において書面で押印を伴うやりとりが多々行われているのが実態だ。単に慣例として押印を求めている場合もあれば、後々トラブルなどに発展した際に保護者が文書作成者であることを学校側が主張・証明することを想定し、念のために保護者らに押印を求めている場合もあるようだ。

 

押印の効果は限定的

一方で、押印の効果として、押印があることで当該文書が保護者によって作成されたことが一定程度「推定」されることにはなるが、これは相手方による反証が可能なものであり、特に保護者に多用されているいわゆる「認印」による押印の場合には、その認印が保護者のものであることを認印自体から立証することは事実上困難であり、押印の効果は限定的。

このことから文科省では、必ずしも押印を得ることにこだわらず、内容によっては押印手続きを省略し、メール配信システムや学校・保護者間における双方向の情報伝達が可能な専用ソフトウェアを活用して必要な情報を得るなど、効率的な情報伝達手段を検討するよう求めている。

そもそも、現在学校が保護者に押印を求めている文書について、その文書が保護者によって作成されたことを証明しなければならないようなトラブルに発展し得ることが想定される事項は限定的だと考えられるが、児童生徒や他人による保護者へのなりすましによる回答を防ぐためには、情報伝達サービスへの個人IDやパスワード付与などといった利用登録のプロセスを得るなど、情報と個人の紐づけが確実にできるデジタル環境がより望ましい。

保護者からのメールを保存したり、保護者が情報伝達サービスを利用した際のログインID・日時、回答内容を記録・保存したりすることは、保護者からの意思表示であることを証明する手段の一つになり得る。また、これらの環境が整うまでの間は、各学校における整備状況に応じて、可能なところからデジタル化を順次進めていくべきだろう。

特に小中学校にぽいては、GIGAスクール構想に基づく整備に伴って利用可能となる環境の中には、アンケート作成機能が備わっているなど、学校と保護者がデジタル上で連絡を取り合うことができる機能が含まれている場合もあるため、それらを活用することも十分可能だ。


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