国土交通省は29日、令和2年都道府県地価調査の結果を公表した。令和2年7月1日時点の1年間の地価動向について、全国全用途が変動率▲0.6%と平成29年以来3年ぶりに下落に転じるとともに、全国住宅地では▲0.7%と下落幅が拡大し、全国商業地も▲0.3%と5年ぶりに下落に転じるなど、新型コロナウイルス感染症の影響により、これまでの回復傾向から変化したことが明らかになった。
その背景として、この1年間のうち前半(令和元年7月1日~2年1月1日)においては、交通利便性や住環境の優れた住宅地、オフィス需要の強い商業地、訪問客の増加に伴う店舗やホテルの進出が見込まれる地域を中心に地価の回復傾向が継続していたとみられる。
その一方で、後半(2年1月1日~2年7月1日)においては、新型コロナウイルス感染症の影響による先行き不透明感から需要が弱まり、総じて上昇幅の縮小、上昇から横ばいまたは下落への転化となったとみられる。
また、地価動向の変化の程度は様々であり、新型コロナウイルス感染症が地価に与える影響の程度が土地への需要の特性や地域の経済構造などに異なることや、再開発など中長期的な上昇要因の有無が地域で異なることによると考えられる。
三大都市圏をみると、全用途平均は平成25年以来7年連続上昇を続けていたが横ばいとなり、住宅地は▲0.3%と下落、商業地は0.7%と上昇を継続したものの上昇幅が縮小している。また、住宅地については、東京圏が▲0.2%、大阪圏が▲0.4%と7年ぶりに、名古屋圏が▲0.7%と8年ぶりに下落に転じた。商業地については、東京圏が1.0%、大阪圏が1.2%で上昇を継続したものの上昇幅が縮小し、名古屋圏は▲1.1%と8年ぶりに下落に転じた。
地方圏については、全用途平均は▲0.8%、住宅地は▲0.9%と下落幅が拡大し、商業地は▲0.6%と2年ぶりに上昇から下落に転じた。
地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、いずれの用途も上昇を継続したものの、上昇幅は縮小した(全用途平均4.5%、住宅地3.6%、商業地6.1%)。その他の地域では、全用途平均で▲1.0%、住宅地で▲1.0%、商業地で▲1.0%となり、下落幅が拡大している。
上昇・横ばい・下落地点数の割合の推移をみると、用途別では商業地が住宅地より昨年からの下落地点数の割合の増加が大きい。また、圏域別では、三大都市圏が地方圏より昨年からの下落地点数の割合が大きく、三大都市圏の中でも名古屋圏の下落地点数の割合の増加が特に大きい。
都道府県別の地価変動率をみると、住宅地では、変動率プラスの都道府県の数は15都府県から5都県に減少し、マイナスの都道府県の数は32道県から42道府県に増加した。
また、商業地については、変動率プラスの都道府県の数は、19都府県から10都府県へと減少し、マイナスの都道府県の数は24県から36道県に増加した。