農研機構は10月1日に、組織改革で農業情報研究センターを開設した。この施設では、外部からの人材も登用し、人工知能(AI)やビッグデータを活用してスマート農業等を実現するための研究が行われる。研究を通じて、農業・食品産業分野でのスマート化とAI人材の育成を推進するとしている。
農業が抱える様々な課題
わが国では、超高齢化と人口減少が進み、農業では人手不足と営農者の高齢化対策、生産性の向上と生産コストの削減等が必要となっている。一方、世界人口の増加により、世界の食料市場は大幅に拡大すると予測されている。
こうした状況の中、飛躍的に進展しつつあるAI技術等を活用して、ロボットによる省力生産、高品質農作物の輸出拡大等を実現し、農業を成長産業とすることが重要な課題となっている。
今回のセンター開設の目的
今回の農業情報研究センターの開設は、政府が掲げる超スマート社会「Society5.0」の農業・食品分野での実現に向けたもの。①最新のAI技術、農業データ連携基盤として整備されつつあるビッグデータを活用し、農研機構独自の知見に立脚した、徹底的なアプリケーション指向の農業AI研究を推進する、②農業データ連携基盤の長期安定運用を目指した研究や運営体制を構築する、③農業が抱える様々な課題解決のため、AIを中心としたICT人材を育成する ― の3つを目的としている。
農業・食品分野のスマート化を推進
この施設では、育種から生産、加工・流通、消費まで、農業・食品分野での「Society5.0」の形態であるスマートフードチェーンにおいて、各過程の戦略的課題にAI技術を以って取り組むこととしている。さらに、外部登用のAI研究専門家が、農研機構内から集結したAI研究要員を教育するとともに、課題解決を図ることとしている。また、スキルアップしたAI研究要員が農研機構内の各研究センターに研究成果を持ち帰るとともに、AI研究を実施し、AI技術の普及を図る。これにより、農研機構内の研究者の約10%(200人)が高いITリテラシーを保有することを目指すとしている。このほか、公設試験場、技術普及員等と連携し、政府目標の「2025年までにほぼ全ての担い手がデータを活用できること」を達成すべく活動していくとしている。
約30の重点AI研究課題
研究センターでは、スマートフードチェーンにおいて特に重要な約30の課題を重点AI研究課題に位置付け、それらの課題解決を通じてスマートフードチェーン全体の生産性向上、無駄の排除、トータルコストの削減、農作物・食品の高付加価値化、ニーズとシーズのマッチング等を実現していくとしている。これらの農業AI研究の成果は、農業データ連携基盤を通して産業界、農業界に広範かつ迅速に提供し、「Society5.0」の農業・食品分野での早期の実現に貢献していくとしている。