2021年4月2日 【研究開発】コロナ禍による収入減で歯の痛み1.4倍増 東京医歯大教授らが解明

昨年来、世界を席巻している新型コロナウィルス感染症だが、この新たな感染症の影響を受け、社会経済状況が悪化した人に歯の痛みが多くみられることが、東京医科歯科大学教授らの研究で明らかになった。新型コロナウィルスによる世帯収入の減少、仕事の減少、失業を経験した人は、それぞれ1.42倍、1.58倍、2.17倍歯の痛みが多かった。精神的ストレスが主な中間因子。歯科疾患は最も多い病気の一つとして知られ、日本にも4000万人近くの人が治療を必要とするむし歯(詰め物が外れた状態なども含む)を有しており、コロナ禍で痛みが強くでる可能性もある。新型コロナウィルスによる収入の減少や失業など経済的影響に対する政策が、歯科疾患の悪化を回避することにつながる可能性があると期待される。

 

この研究成果を導き出したのは、東京医歯大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の松山祐輔助教、健康推進歯学分野の相田潤教授の研究グループ。大阪国際がんセンターの田淵貴大副部長らと名古屋大との共同研究で、新型コロナウィルス流行の影響を受け社会経済状況が悪化した人は歯の痛みを訴えることが多く、精神的ストレスが主な中間因子であることを明らかにした。

この研究は文科省科学研究費補助金、厚生労働科学研究費補助金、日本医療研究開発機構研究助成金、新型コロナウィルス緊急対策のための大学「知」活用プログラムの支援のもとで進められたもの。研究成果は、国際科学誌(ジャーナル・オブ・デンタルリサーチ)に、4月1日午前10時(米国東部時間)にオンライン版で発表された。

新型コロナウィルス感染症対策として社会活動が制限され、経済への影響が懸念されている。世帯収入の減少や失業など社会経済状況の悪化は、口腔の健康にも悪影響を与える可能性がある。この研究は、新型コロナウィルス感染症の影響による社会経済状況の悪化と歯の痛みの関連を明らかにすることを目的に行われた。

相田教授らは昨年8月から9月に日本全国の15‐79歳男女を対象として実施された大規模なインターネット調査であるJACSIS研究(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)の回答者2万5482名のデータを分析した。新型コロナウィルス感染症の影響による世帯収入の減少、仕事の減少、失業と直近1ヵ月の歯の痛みの関連を、その他の背景因子を考慮した多変量ロジスティック回帰分析で検証。さらに、世帯収入の減少と歯の痛みの中間因子を媒介分析で比較分析した。

調査の結果、歯の痛みは回答者の9.8%にみられ、世帯収入の減少、仕事の減少、失業が歯の痛みに統計的に有意に関連していた。それぞれオッズ比(ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度)1.42[1.28、1.57]、1.58[1.41、1.76]、2.17[1.64、2.88])。さらに、世帯収入の減少と歯の痛みの関連は、精神的ストレス(21.3%)、歯科受診の延期(12.4%)、歯磨きの減少(1.5%)、間食の増加(9.3%)が中間因子であることが浮き彫りとなった。


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