2021年6月14日 【琉球大】生物多様性BDで外来生物分布を地図化 「ダーウィンの難題」を解明し外来植物の侵入メカニズムを解明

琉球大学理学部・久保田康裕教授の研究チームは、生物多様性ビッグデータを分析して、〝ダーウインの難題〟と呼ばれる外来生物侵入の仕組みを解明した。研究チームは、世界の生物多様性ホットスポットの一つである日本を舞台にして、外来植物と在来植物の分布を地図化し、外来植物の侵入を決定している要因を検証した。その結果、日本国内の外来植物の侵入・定着には、外来種の原産地、人為かく乱、在来植物群集の空きニッチが関係していることが明らかになった

国内の外来種ホットスポットの地理分布には、外来種の原産地に依存した気候環境要因の影響と、都市化が関係していた。これらの結果から、今後の温暖化で、熱帯由来の外来植物が日本北部地域へ分布拡大し、都市化が生物学的侵入を加速させることが、予想される。

一連の研究成果に関する論文は、世界的学術出版社・シュプリンガー・ネイチャーから刊行された保全生物学誌「Biological Invasions」、と同じく世界的学術出版社・ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(Wiley)から刊行された生物地理学誌「Journal of Biogeography」に掲載された。

島国の日本は生物多様性のホットスポット

「外来種がどのような地域に侵入するのか?」という問題は、生物地理学の長年の課題。150年以上も前に、イギリスの偉大な自然科学者であるチャールズ・ダーウィンが「種の起源」で考察したことから、「ダーウィンの難題」と呼ばれています。

このダーウィンの見解は、在来種と系統的に近縁な外来種ほど、在来種と似通った生態学的特性を有しているので、在来生物群集の環境に適応して侵入しやすいという、前適応仮説と呼ばれる。

しかし、ダーウィンは「ところが実際にはそうではない…」と、真逆の仮説を、データに基づいて示す。ダーウィンは「合衆国北部の植物相便覧」の帰化植物属を見て、その多く(100族/162属以上)が土着(在来)でないことを発見している。

ダーウィンはこの結果を元にして、系統的に遠縁の種間では、生態学的特性があまり似通っていないので、外来種が在来の土着種との競争で有利になり帰化しやすいという、帰化仮説(在来種と系統的に異なる外来種が帰化しやすい)を提案した。

これら帰化仮説と前適応仮説、俗な言い方をすると「類は友を呼ぶ(似た者同士が集まる)」ように外来種が侵入するのか、あるいは「類を異にする(同属嫌悪)」で在来種と似てない者が侵入しやすのか、ということだが、相矛盾しているので、外来種の侵入の仕組みは、ダーウィンの難題と呼ばれるようになった。

「よその土地で土着種と闘争して帰化に成功した動植物の性質を調べれば、土着種同士の間で相手よりも優位に立つために遂げるべき変化について、何がしかのヒントが得られるだろう」。

わが国は島国で生物多様性ホットスポットとして知られ、外来種に関するダーウィンの難題を解明するのに、理想的な地域。日本に帰化した外来種の性質を調べれば、外来種の侵入の仕組みが理解できると考えられる。このような背景と観点から、教授の研究チームは、外来種の研究を展開している。


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