2021年12月3日 【横浜市大】言語処理に関わる脳内ネットがアニメ化で一目瞭然に

横浜市立大学医学部医学科脳神経外科学教室の園田真樹客員研究員(米国ウェイン州立大学ミシガン小児病院小児科・神経内科研究員兼任)、米国ウェイン州立大学ミシガン小児病院小児科・神経内科 浅野英司終身教授らの研究チームは、5歳以降の言語ネットワークでの時空間ダイナミクスとその発達に関する新しい神経生物学的モデルを報告した。このモデルは、言語処理を担う脳表領域の神経活動の強さ、その領域間の結びつきの強さ、さらに、どの深部経路を介して神経情報を伝播するのかを6次元ダイナミックトラクトグラフィー解析技術を用いて、アニメーションとして可視化した。

この研究成果は、英国の学術誌「BRAIN」に掲載された。

研究成果のポインは次のとおり。

①離れて存在する脳皮質領域間が、100分の5秒以下の速度で、どの解剖学的経路(脳白質線維)で、どちらの方向に、神経情報を伝達するのかを一目瞭然にした

②質問に答える際に、言葉の想起に関わる脳皮質同士は、たとえ離れていても、より多くの情報を伝達できるよう、強く連結されていることを明らかにした

③言葉の想起に関わる皮質脳領域間の結びつきは、5歳以降も年齢に応じて強化されていることを明らかにした

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会話中に言いたいことが口から素早くでるのは、我々の脳が各領域で複雑な言語情報を処理してくれているから。言語処理を司る脳領域は離れて存在していることは古くから知られているが、どれくらいの速度で、どの深部経路を伝って、脳領域間が情報を受け渡しているのかという脳内ネットワークについては依然として不明な点が多くあった。

そこで、37名の薬剤抵抗性てんかん患者から記録された3401ヵ所の頭蓋内脳波を用いて、記録部位での機能的役割、記録脳表間の機能連結をそれぞれ解析した。

園田客員研究員らの研究は、言語処理に携わっている離れた脳皮質領域同士が、どの深部経路で、どれほどの速度で、どの方向に向かって、神経情報を伝達できるのかを一目瞭然にした点で神経科学分野において非常に意義は大きいといえる。研究グループでは、この研究で用いた解析技術を応用し、より安全で有効な脳神経外科診断・治療方法の研究も進める予定で、医療分野への技術応用が期待される。


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