2022年4月25日 【東北大】NEDO「若サポ」に採択 世界最高性能の小型推進装置開発を加速

■ポイント□

○両者が共同開発している世界最高性能のハイブリッドスラスタについて、2023年の軌道上実証を目指す研究開発テーマがNEDO「若サポ」に採択

○世界最高性能の小型推進装置の開発を加速

 

 

東北大学学際科学フロンティア研究所の齋藤勇士助教が㈱ElevationSpace(本社:仙台市)と共同で開発している世界最高性能のハイブリッドスラスタで、宇宙実証を実施する研究開発テーマが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)」に採択された。採択テーマでは、ハイブリッドスラスタの軌道上実証を2023年に実施する計画で、「若サポ」の支援により世界最高性能の小型推進装置の開発を加速させる。

従来の高推力スラスタ(推進装置)は固体または液体推進剤を用いた大型スラスタであり、安全性を維持したまま経済的に小型化するには限界がある。そのため、大型衛星で一般的に使われるスラスタは、大きさの制約から小型衛星には搭載されていなかった。

一方で、小型衛星に搭載可能な電気スラスタは小型ではあるものの、高推力化させることには限界がある。

ElevationSpaceが2023年打上を目指し開発している技術実証機では、地球への帰還のために軌道を離脱する大きな推力が必要で、高推力スラスタが必須となる。そこでElevationSpaceが東北大と共同で開発するのがハイブリッドスラスタ。

ハイブリッドスラスタは、液体/気体の酸化剤と固体の燃料を用いることを特徴とする推進装置。危険物でないプラスチック等の固体燃料を用いるハイブリッドスラスタは大型衛星用のスラスタと比べると性能は若干劣るものの、小型衛星に搭載可能なスラスタで高い安全性と高い推力を両立させることができる。

一般的に小型衛星に用いられるスラスタの推力は大きくても数ニュートン(N)級であるのに対し、今回開発するスラスタは数百 N 級の推力を有している。

東北大の齋藤助教は、これまでに新型ハイブリッドスラスタの燃焼機構に着目した研究を進めており、国内外の宇宙推進分野で高い評価を受ける若手研究者。ElevationSpaceとの共同研究にて世界に先立ち最高性能の小型高推力スラスタを宇宙空間で実証を目指している。

そこで今回、ElevationSpaceと東北大学際科学フロンティア研究所で進める「小型宇宙機モビリティ確保に向けたハイブリッドスラスタの宇宙実証」という研究開発テーマがNEDOの「若サポ」に採択され、今年度から支援が始まった。

「若サポ」は、実用化に向けた目的指向型の創造的な基礎又は応用研究を行う大学等に所属する若手研究者を発掘し、若手研究者と企業との共同研究等の形成を促進するといった支援をすることにより、次世代のイノベーションを担う人材を育成するとともに、わが国の新産業の創出に貢献することを目的とした事業。事業期間は最長5年間で最大1.5億円(年間3000万円)まで支援される。

この研究開発は、すでにスラスタの基礎燃焼特性取得のための小型燃焼試験を終え、現在はスラスタの技術実証機搭載に向けて詳細設計を行っている段階。今後は実機環境での燃焼試験を行うなど、2023年に実施する計画の軌道上実証に向けて、「若サポ」の支援により世界最高性能の小型推進装置の開発を加速させる。


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