2021年10月13日 【愛媛大】蜜入りリンゴのメカニズム、世界で初めて明らかに

愛媛大学大学院農学研究科、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、ブエノスアイレス大学の国際共同研究グループは、蜜入りリンゴ果実内の細胞レベルの代謝変化と水分の状態を空間的にとらえることに世界で初めて成功し、蜜入りのメカニズムの一端を明らかにした。この研究成果は、この夏スプリンガーネイチャーグループと南京農業大が共同刊行し、園芸学分野を牽引する国際学術誌Horticulture Researchにオンライン掲載された。

温暖化で懸念「蜜入りの不安定化」

一般的に、品種「ふじ」に代表される蜜入りリンゴは、低温により蜜形成が誘導される。蜜入りリンゴは香しいフレーバーを持つため、高付加価値果実として国内外で人気を博しているが、ここ数年の温暖化に伴う秋の気温上昇から、果実内の蜜入りの不安定化が懸念されている。

蜜形成のメカニズムについては、これまで果実内の細胞間隙への転流糖であるソルビトールの集積や、成熟に伴う細胞膜強度の低下を介する溶質蓄積に起因した水分の集積など、いくつかのメカニズムが提唱されてきた。しかし、細胞にフォーカスして水の動きと生理代謝を同時に調べられた事例はなく、蜜のある部分で何が起こっているのか、その全容は解明されていなかった。

そこで、蜜入り果と通常の果実を用いて、愛媛大で開発された1細胞の水の動きと網羅的な代謝産物の同時計測が可能なピコリットル・プレッシャープローブ・エレクトロスプレーイオン化質量分析法と、原理の異なる2種類の浸透圧計測法(凝固点降下法、蒸気圧法)とを組み合わせ、リンゴの中心にある蜜部分、外側の蜜のない部分、両者の間にある境界部分の1細胞を対象に解析を行った。

その結果、通常の果実とは対照的に蜜入り果の蜜部分、境界部分では細胞膨圧の低下に伴って、発酵代謝が促進され、アルコール類・エステル類などが生成された後、細胞外に蓄積することで、蜜独特の香りと外観を生じることが明らかとなった。また、蜜入り果では、通常の果実には見られない外側の組織から蜜部分に向かって水の流れがあることを見出しました。

蜜のない部分ではエアスペースと呼ばれる細胞間隙に空気層が残っているため、果実組織の断面の外観は不透明になっている。これに対して、蜜のある部分では上記メカニズムでエアスペースにアルコールや水がたまった結果、空気層が消失することで、光が乱反射せず、透明化することが明らかになった。


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