2022年4月14日 【京大】ヒトは小さく生まれて大きく育つ ―その秘密は鎖骨にあり―

■ポイント□

〇出生が近づくと鎖骨の成長が減速

〇チンパンジーには見られない、ヒト特有の現象

〇相容れない特徴を両立

 

ヒトは頭が大きいだけでなく、肩幅も広い動物です。広い肩幅は、二足歩行を安定させたり、狩りで槍を遠投したりするために重要な特徴である一方、デメリットもある。二足歩行に適したヒトの骨盤は小さく、産道が狭いこととあいまって、難産の原因となるのから。大きな頭や広い肩幅が原因の難産は珍しいものではなく、最悪の場合は死産に繋がる。頭では頭蓋骨を未発達で柔らかい状態に保つことで、出生に対応していることが知られているが、肩がどのように出生という難関をクリアしているのかは未解明だった。

京都大学の川田美風 理学研究科博士課程学生、森本直記准教授、中務真人同教授の研究グループと、同大医学部、同霊長類研究所、東京大、チューリッヒ大(スイス)、ルーヴェン・カトリック大(ベルギー)は、国際共同研究を行い、肩の成長に鍵があると考え、胎児期からオトナまでの骨格の成長パターンをCT(コンピューター断層)により厳密に計測した。

この結果、ヒトでは出生が近づくと、肩幅に直接関係する鎖骨の成長が減速し、出生後にそれを補うように加速することを発見した。

この現象はチンパンジーにはみられず、また、ヒトでも頭蓋骨や他の骨にはみられない鎖骨特有のものだった。ヒトは出生前後の特殊な成長パターンにより難産を緩和することで、「広い肩幅」と「狭い産道」という相容れない特徴を両立しているという。一方で、研究グループでは、「いつ、どのように、肩の特殊な成長パターンが進化したのか、今後さらに詳しく検証する必要がある」としている。

この研究成果は4月12日に米国の科学誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」に掲載された。


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