2020年7月22日 高齢者が話しやすいロボットの性格を調査 ユーザーとの相性、マッチしないほうが好ましいケースも

筑波大学の研究グループは9日、高齢者にとって話しやすい対話ロボットの性格に関する調査結果を公表した。その結果、ロボットを仲介した方が、直接伝えるよりも話しやすい話題があることが判明。テーマによっては、ユーザーとロボットの性格をマッチさせない方が、スムーズに会話が弾んだという。

研究グループは平均年齢72歳の高齢者21人に対し、ロボットを通じて話す場合と、通常の電話を通じて人と話す場合との比較実験を行った。いずれの場合も高齢者が娘に対し、最近楽しかったことや忘れられない経験など、特定の話題について話すという設定だ。実験後に参加者へアンケートを行った結果、経済的基盤の損失や知り合いとの死別といった喪失体験に関する話題では、ロボットを仲介して話す方が直接よりも話しやすいということが確認できた。

調査では、こうした「話しやすい」ロボットが持つべきキャラクターを探るため、平均年齢69.8歳の高齢者720人のうち、有効な回答を得た589人分のデータを分析。その結果、「内向的で神経症的傾向の強い高齢者と『健康』について話す際、ロボットは外交的かつ大らかに設計すべき」や、「外交的で神経症的傾向の強い高齢者と『孤独』に関して話す際、ロボットは内向的かつ大らかに設計すべき」‐など、推奨すべき10種類以上の設計指針が浮かび上がってきた。人とロボットの関係性に関する研究では従来、「対話ロボットやAIの性格は、ユーザーの性格に合わせるべき」というのが通説だった。しかし、今回の結果により、話す内容や高齢者の性格によっては、むしろ逆にロボットの性格をマッチさせない方が、好ましいことが明らかになっている。

悩み事を1人で抱え込まず、他人に打ち明けられることは、高齢者の社会的孤立を防ぐうえで非常に重要なことだ。今回の研究では、そうした高齢者の自己開示を促すために、対話ロボットが有効な手段になることが示された。研究成果は今後、メーカーなどが高齢者向けの対話ロボットやAIを開発するうえで、それらに持たせる性格で望ましいものについての有用な設計指針になることが期待されている。研究グループはロボットやAIについて、性格以外に外装素材や自立知能をはじめとする様々な要素の開発も進めることで、高齢者の社会的孤立防止に貢献していくとしている。


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