2020年9月18日 歩数から見る、外出自粛の影響 順大教授らが調査 幼児の歩数減少が顕著に

新型コロナウイルス感染拡大を防止するために、緊急事態宣言が発令されたが、順天堂大学教授らが花王(株)と共同で行った調査研究で、5月1日から2週間にわたる宣言期間中、3~5歳の幼児の歩数が2~6割減と大幅に減少したことが明らかとなった。影響は大人よりも大きく、ストレスを感じたり、生活リズムが乱れたりした幼児も少なくないという。一方で、外出できない場合でも、工夫次第で幼児の活用量は増え、さらに、親子で一緒に活動することが幼児の活動量増につながることもわかった。

新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発出され、「ステイホーム」が求められた今年4月以降、幼稚園や学校などの休園・休校によって小学生から大学生だけでなく、幼児の生活も大きく変化した。自宅で過ごす時間が増え、遊ぶ場所や運動する機会が減少するなど、これまでとは異なる生活が始まったことで、健康や体力への影響が心配されてきた。

そこで今回、同大鈴木宏哉教授らは、外出や遊びの場面で親との関わり合いが多い就学前の幼児(1~5歳)に着目し、幼児と保護者(母親)を対象に、緊急事態宣言により行動が限られた環境下での活動実態を調査。幼児と保護者に歩数計を装着してもらい、歩数計測とアンケート調査を実施することで、親子の活動実態やそこで生じている課題を速やかに把握し、〝新しい生活様式〟に対応した解決の糸口を探ることを目指した。

 

 □幼児も保護者も歩数が減少。影響は幼児の方が大きく、3~5才では2~6割減

調査期間中の幼児の一日あたり平均歩数は1~5才で6938歩、3~5才では6702歩。3~5才の歩数の先行研究は豊富で、それらによると3~5才の歩数は幼稚園や保育園に通園する平日に多い傾向があり、平日の平均歩数は9686~1万5278歩、休日の平均歩数は8238~1万1207歩。しかし今回は、多くの幼児が期間中通園していなかったことから、平日と休日の差はあまりみられなかった。3~5才の歩数は先行研究に対して約2~6割少なく、特に先行研究の平日と比較すると大幅減になっている。保護者へのアンケートでも「子どもが運動不足になっている」という回答は多く、こうした認識と一致する結果になっている。

一方、保護者の1日あたりの平均歩数は5885歩。日常生活で歩数は厚労省の国民健康・栄養調査(2018年、20~39才女性)では6535歩、花王が行った先行研究での1~5才の母親では7363歩で、減少率は約1~2割にとどまっている。この調査結果から、大人よりも子どもの方が、活動に対する影響を大きく受けたことが明らかとなった。

 

 □外出しないことが幼児の歩数減の大きな要因

調査期間中の歩数は外出の有無に影響されており、外出しないと1~2才では約3割減、3~5才では約4割減と大きな減少幅を記録した。3~5才だけでなく、先行研究が乏しかった1~2才も含めて、外出が制限されることが歩数減の大きな要因になったと推察される。

 

 □外出しないときも工夫次第で幼児の活動量は増える

外出していないときに保護者が幼児の活動を促す工夫をすると、幼児の歩数が増える傾向がみられた。具体的には「なるべく一緒に体を動かすことができるような動画などを見せて遊ぶ。庭で思いきり遊ばせる。階段の昇り降りで運動不足にならないように遊ばせている」といった声が挙がっており、外出しづらいときに減少しがちな活動量を少しでも取り戻すためのヒントになる。

 

 □1~2才では、親子で一緒に活動することが幼児の活動量増につながる

保護者を歩数の多いグループと少ないグループに分けて子どもの歩数を分析したところ、1~2才では、保護者の歩数が多いグループのほうが幼児の歩数が多いことが分かった。この年齢の幼児については、3~5才に比べて一人でできることが少なく、活動の場面でより親との関わり合いが多いため、親子で一緒に活動することが、幼児の活動量を増やすことに効果的であると考えられる。

 

 □ストレスを感じたり生活リズムが乱れたりした幼児も少なくない

保護者への自由回答形式のアンケートから、保護者が各幼児に対して緊急事態宣言前と比較して困っていたことを探った。それによると、活動量が減ったこと以外に、「ストレス性じんましんになった。以前より甘えや癇癪が増えた。反抗も増えた」「友達とあまり遊べず、子どももストレスが溜まっている」など、ストレスを感じたり、生活リズムが崩れたりした幼児が少なくないことが分かった。


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