2021年10月27日 岐阜・大湫町の大杉倒木化の原因解明 地上部と地下部のバランス崩れが要因

国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学大学院環境学研究科の平野 恭弘准教授、大学院生命農学研究科の谷川 東子准教授らの研究グループは、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の南光 一樹主任研究員との共同研究で、岐阜県瑞浪市大湫町の樹齢670年の神明大杉の倒木化は、根系の発達制限や腐朽などにより幹等の地上部と根系の地下部とのバランスが崩れたことに要因があることを明らかにした。

 

樹齢670年の神明大杉の根系を評価

令和2年7月豪雨の中、樹齢670年の岐阜大湫町神明神社の大杉が倒木化した。当初から豪雨による影響が指摘されてきたが、倒木化の要因は明らかになっていなかった。

研究グループは、その要因を調査するため、倒木化した大杉の根鉢の大きさを直接計測し、倒木全体をレーザースキャナでデジタル化し、根系と幹の体積を推定した。また、倒木化の要因として、倒木時の気象状況との関係性を調べた。

調査の結果、大杉の高さ1.3メートルにおける幹直径は2.7メートルであり、根鉢の大きさは、横最大幅9.1メートル、縦最大幅6.6メートル、最大厚さ2.3メートルと巨大であったものの、中心部には腐朽が広がっていた。スギ成木の過去の知見と比較すると、大杉の根鉢はむしろ小さいことが明らかとなった。

さらに、レーザースキャナで推定された根系体積は43立方メートル、幹と枝の推定体積は158立方メートルで、推定されていない枝葉を考慮すると、地上部に対する根系の体積割合は、スギ成木の既存報告と比較して小さいことが明らかになった。大杉の根の切断面からは、地上部とのバランスに耐えられずに引き裂かれたことが示唆された。

また、倒木時の1時間の最大降水量43ミリや1日の降水量137ミリは、これまでに大杉が経験してきた雨量の範囲内だった。一方、豪雨期間中の日照時間は著しく短く、繰り返される降水により大杉とその土壌が乾きにくい環境であったことが示唆された。

これらの結果を踏まえ、倒木化の要因として、根系に進んだ腐朽や土壌水分量の増加に伴う根系支持力の低下、加えて地上部の幹の水分量増加などにより、大杉の地上部と地下部のバランスが崩れたことが推察された。

 

巨木や大径木の管理では地上部 衰退だけでなく根系評価も必要

今回の研究は、豪雨のみが大杉倒木化の要因ではなく、それ以前からの大杉の生育状況、特に根系の発達状況が主な要因であることを示すものである。

巨木や大径木の倒木化要因を解明する学術調査は、災害直後の規制、地域住民の環境や感情に配慮する必要があるため、これまであまり進んでいないのが現状。今回は、岐阜大湫町の協力の下、倒木化直後の被害程度を詳細に調査することができた。

これらの知見は、豪雨や強風など局所的気象において倒木被害を防ぐ減災の観点から、巨木や大径木について枝葉など地上部の衰退状況だけでなく、根系生育状況の評価の必要性など、新たな管理指針の作成に役立つことが期待される。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.