2021年10月5日 体験活動の大切さ」裏付け 文科省、出生児調査で効果分析

文部科学省は、平成13年に出生した子供と保護者を18年間追跡した調査データを使い、時系列的な観点から、体験活動がその後の成長に及ぼす影響を分析し、関連性を明らかにした。特に、子供の環境を考慮した結果、小学生の頃に体験活動の機会に恵まれていると、高校生の頃の自尊感情が高くなる傾向が、家庭の経済状況などに左右されることなく見られることなどがわかった。

研究結果によると、小学生の頃に自然体験、社会体験、文化的体験といった体験活動や読書、お手伝いを多くしていた子供は、高校生の時に自分に対して肯定的で自分に満足する「自尊感情」や、自分のことを活発だと思う「外向性」、新しいことに興味を持ったり自分の感情を調整する、将来に対して前向きなど「精神的な回復力」といった項目の得点が高くなる傾向が見られた。

小学生の頃に異年齢の人とよく遊んだり、自然の場所や空き地・路地などで遊んだりした経験のある高校生にも同様の傾向が見られた。経験した体験活動や読書、遊び、お手伝いによって影響が見られる意識や時期が異なることから、一つだけでなく多様な経験をすることが必要であるということも見えてきた。

小学校の時に体験活動などをよくしていると、家庭の環境に関わらず、高校生の時に自尊感情や外向性、精神的な回復力といった項目の得点が高くなる傾向が見られた。

今回の研究により、これまで直感的に捉えられてきた「体験活動は、子どもの成長にとって大切な要素だ」という感覚を、確かな分析方法により裏付けることができた。キャンプやスポーツ観戦、音楽鑑賞や絵本の読み聞かせなど、さまざまな体験を子育てに取り入れてきた家庭の取組や、CSR活動等の一環として教育的事業を実践してきた企業等の取組が、確かに必要なものであったことを裏付ける結果となった。

調査結果を踏まえ、文科省では、子供たちが置かれている環境に左右されることなく、体験の機会を十分に得られるように、家庭ではお手伝いや読書の習慣を身に付けるようにする、地域では放課後などに大人と遊びを通じて交流する機会を設ける、学校では社会に開かれた教育課程の実現を目指して地域と連携し体験活動の充実を図るなど、地域・学校・家庭が協働し、「多様な体験を土台とした子どもの成長を支える環境づくり」を進めることが、よりよい社会創りにつながるとみている。

また、現在、新型コロナウイルス感染症の影響により青少年の体験活動が減少していることから、短期の自然体験活動における感染症対策に関する調査研究を行うとともに、体験活動の機会の提供などにより体験活動の提供を実践する企業の表彰といった取組を通じ、青少年の体験活動を推進していく方針。

今回の調査研究は、「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」の調査データ(サンプル数:各年約2.4万~4.7万 調査頻度:0歳~18歳まで年1回)を用いて時系列的観点から子供の頃の体験とその後の意識等の関係を検証し、子供の頃の体験が成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

「体験」とその効果の関連性を検証した調査研究はこれまでにも行われてきたが、今回のような大規模な追跡調査を用いて体験活動との関連性を明らかにする分析は、文科省として初めての取組。


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