2023年12月12日 バッタは騒音下でも食欲旺盛 北大准教授らが解明、生態系全体への影響大

北海道大学大学院地球環境科学研究院の先崎理之准教授らの研究グループは、国立環境研究所生物多様性領域の角谷 拓室長、安藤温子主任研究員とともに、陸上の主要な人為的な騒音の一つである自動車騒音が、鳥類の個体数や捕食の頻度等だけでなく、無脊椎動物消費者であるバッタ類の食性を多様化させ、その影響は騒音が十分減衰する騒音源から300メートル程度の範囲でも生じることを解明した。自動車騒音が、鳥類の個体数や捕食の頻度など生態系全体に影響を及ぼすことを浮き彫りにしたもの。特に無脊椎動物消費者(バッタ類)の食性を変化させることが今回初めて明らかにした。騒音に晒されたバッタ類は食物の多様性が増し、騒音の音圧が背景騒音と同程度の場所でも影響が及ぶことが明らかとなった。

ここ数年、自動車や航空機等から出る騒音が野生動物に与える影響が問題視されている。しかし、従来の研究は脊椎動物の行動に対する騒音の影響に注目しており、植物や小動物の死骸等の消費を通して重要な生態系機能を担う無脊椎動物に対する騒音の影響は十分に調べられてこなかった。

そこで研究グループは、騒音の野外再生実験とDNAメタバーコーディング技術を組み合わせて、自動車騒音が草原生態系での雑食性バッタ類の食性にどのように影響するのかを調べた。

その結果、騒音に晒されたバッタ類は、特定の食物を専食するのをやめ、より多くの種類の食物を摂取するようになった。また、この食性変化は、高レベルの騒音に晒された場所に加えて、騒音が十分減衰する騒音源から300メートル程度離れた場所でも検出された。

さらに、メカニズムを調べたところ、この食性変化は、鳥類や捕食圧の減少といった騒音の間接効果ではなく、騒音の直接効果によって説明されることが判明。この研究から、騒音汚染は陸域の生態系機能を担う無脊椎動物の食性に影響する重要な要因であること、その影響は従来想定されていた範囲よりも広域に及ぶ可能性があることが明らかになった。

バッタ類の食性の多様化は、バッタ類の生存に重要な体内代謝の悪化に関連していると考えられている。また、無脊椎動物の食性の変化は、生態系の中のエネルギーの流れを変えることで生態系のバランスを損ねる可能性がある。

この研究成果は、騒音がバッタ類の生存率や適応度だけでなく、生態系の機能にまで影響を及ぼし得ること、さらに影響は従来想定されていた範囲よりも広域に及んでいる可能性があることを示している。

騒音汚染は世界的に広がっており、規模は現在も拡大を続けている。この研究は、このような騒音による影響から生物多様性や健全な生態系を守るためには、残された騒音による影響が及んでいない静かな地域を特定し保全していくことの重要性を強調している。加えて、騒音の影響が従来の想定よりも広域に及んでいる可能性が明らかにされた結果を踏まえ、自然保護区には十分な広がりのある緩衝地を設定することで、自動車が通行する道路などの騒音源への対策を強化していく必要性があることを示している。

これらの取り組みにより、劣化を続ける生物多様性や生態系の回復が期待される。

この研究成果は、10月13日公開のEcology Letters誌に掲載された。

実験に用いたヒナバッタ(左)、ウスイロササキリ(中央)、ヒメクサキリ(右)


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