2024年3月1日 「アイガモロボ」の抑草効果を実証 水稲有機栽培の省力的雑草防除技術として期待

農研機構、有機米デザイン株式会社、東京農工大学、井関農機株式会社は、水田用自動抑草ロボット「アイガモロボ」の抑草効果を確認する実証試験を全国36ヵ所で行い、アイガモロボを使用することで雑草の発生量が水稲の収量に影響を及ぼさない程度に抑えられることを確認した。また、アイガモロボの導入により、導入しない場合と比べて、収量は平均10%増加し、機械除草の回数が58%減少したことから、水稲有機栽培における省力的な雑草防除技術としての活用が期待されている。

国内では、環境保全や農産物の安心・安全に対する関心が高まり、有機農産物に対する需要が着実に増加していくと見込まれている。2021年には農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定し、有機農業取組面積の拡大を進めているが、有機栽培の普及は十分に進んでいないのが実態だ。

国内の水稲作付面積は全耕地面積の4割弱を占めており、みどりの食料システム戦略が目標とする有機農業取組面積を達成するには、水稲有機栽培の面積拡大が喫緊の課題である。しかし、有機栽培は、慣行栽培と比べて収量が低く、不安定な傾向にある。加えて、水稲有機栽培では除草作業に要する労力が非常に大きく、栽培面積の拡大を阻害する大きな要因になっている。このため、国内の担い手の高齢化や減少が加速化する現状では、水稲有機栽培における除草作業の省力化と安定した雑草防除を可能にする除草技術の開発が求められている。

こうした状況の中、2023年、井関農機株式会社が、有機米デザイン株式会社が開発した水田用自動抑草ロボット「アイガモロボ」の販売を開始した。しかし、今後の普及を加速化するためには、全国各地の様々な気象・ほ場条件下で実証試験の事例を積み重ね、雑草抑制効果や水稲の収量に対する影響、走行時の問題点やアイガモロボの導入要件(ほ場面積、対象地域、対象雑草種等)を整理する必要がある。

今回、2021年(18都府県、アイガモロボ75台使用)と2022年(34都府県、アイガモロボ210台使用)に実施された実証試験のうち、一部で取得した高精度なデータの整理・解析が行われ、アイガモロボの雑草抑制効果や水稲収量への影響の検証が行われた。

 

アイガモロボの特徴

アイガモロボは、アイガモを用いたアイガモ農法(除草)に着想を得て開発されたもので、効果が不安定なアイガモの代替として活用が期待されている。

大きさは90cm×130cm×40cm、質量は約16kgで、搭載した全地球測位システム(GPS)に基づき自動走行が可能。動力源はソーラーパネルによるモーター駆動で、晴天時の作業であればバッテリーの交換は必要ない。田面に浮かべるフロート式のため、水稲の上も走行可能であり、水稲の条間(畝の間)や株間(稲株と稲株との間)を区別しない。

本機を使用できる期間は、水稲移植直後から3週間程度で、10a当たり30分程度の能率でほ場全面をくまなく走行する。また、田面を攪拌するスクリューが地表面の土を巻き上げ濁らせることで雑草の光合成を阻害することに加え、地表面に堆積した土が地表面の雑草種子を埋設することで雑草の発生や生育を抑制すると考えられている。


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