2016年4月1日 β‐クリプトキサンチンの新効果 生活習慣病の発症リスクとの関連を解析

農研機構果樹研究所は、浜松医科大学健康社会医学講座、浜松市(旧三ヶ日町)と合同で2003年度から継続して栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を実施している。三ヶ日町研究では、ウンシュウミカンに多く含まれるβ‐クリプトキサンチンや緑黄色野菜に多いβ‐カロテン、葉物野菜に多いルテインなどのカロテノイド色素と様々な健康指標との関連を調査している。そうした研究の中で、1073名を対象とした10年間の追跡調査が行われたが、その結果、β‐クリプトキサンチンの血中濃度が高い物は2型糖尿病、脂質代謝異常症、アルコール性肝機能異常症(血中高ALT値)の発症リスクが有意に低下することを発見した。今後の研究では、今回の研究成果を活用し、ウンシュウミカンの機能性訴求ポイントを増やすために産地と検討を進めていくとしている。

欧米を中心とする最近の栄養疫学研究では、果物や野菜の摂取ががんや循環器系疾患の予防に重要であることが明らかにされつつある。また、これらの生活習慣病の発症に酸化ストレスの関与が示唆されるようになり、果物や野菜に多く含まれるカロテノイド等の抗酸化物質が酸化ストレスを軽減することで様々な生活習慣病の予防に有効であると考えられるようになってきている。

「三ヶ日町研究」は、浜松市北区三ヶ日地域の住民1073名を対象に行われている栄養疫学調査。ウンシュウミカンなどの果物や野菜等に豊富に含まれる抗酸化物質であるカロテノイド類(リコペン、α‐カロテン、β‐カロテン、β‐クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン)が健康に与える影響を疫学的に明らかにすることを目的としている。今回、調査開始から10年で追跡調査が完了した者について、β‐クリプトキサンチンを始めとする血中カロテノイド値と2型糖尿病等の生活習慣病の発症リスクとの関連について縦断的に解析が行われた。

 

3つの病気の発症率を調査

今回、解析が行われたのは、2003年度の調査開始から10年間の間に少なくとも1回以上の追跡調査が完了した被験者910名。調査開始時に既に2型糖尿病(診断基準:空腹時血糖値が126㎎/dL以上、または糖尿病治療薬を服薬中の者)を発症していた被験者を除いて、血中β‐クリプトキサンチン濃度について、低いグループから高いグループまでの3グループに分け、各グループにおける2型糖尿病の発症率が調査された。その結果、血中β‐クリプトキサンチンが高濃度のグループにおける2型糖尿病の発症リスク(ハザード比)は、低濃度のグループを1.0とした場合0.43となり、統計的に有意に低い結果となった。この関連は、喫煙・運動習慣や総エネルギー摂取量、アルコール摂取量などの影響を取り除いても統計的に有意だった。

次に、追跡調査が完了した910名のうち、調査開始時に既に脂質代謝異常症(診断基準:空腹時の血中中性脂肪値が150㎎/dL以上、もしくは善玉コレステロールであるHDLコレステロールが40㎎/dL未満、または脂質代謝治療薬を服薬中の者)を発症していた被験者を除いて、血中β‐クリプトキサンチン濃度で低いグループから高いグループまでの3グループに分け、各グループでの脂質代謝異常症の発症率が調査された。その結果、血中β‐クリプトキサンチンが高濃度のグループにおける脂質代謝異常症の発症リスクは、低濃度のグループを1.0とした場合0.66となり、統計的に有意に低くなった。この関連は、2型糖尿病の発症率に関する調査結果と同様、喫煙や運動習慣、総摂取カロリー、アルコール摂取量などの影響を取り除いても統計的に有意だった

さらに、被験者910名のうち、調査開始時に既に肝機能異常が認められた者(診断基準:血中ALT値が31IU/L以上、またはB、C型肝炎ウイルス陽性者、または脂質代謝治療薬を服薬中の者)、一日あたりのアルコール摂取量が60g以上の者を除いて、血中β‐クリプトキサンチン濃度が低いグループから高いグループまでの3グループに分け、各グループでの非アルコール性肝機能異常症(血中高ALT値)の発症率が調査された。その結果、血中β‐クリプトキサンチンが高濃度のグループにおける非アルコール性肝機能異常症の発症リスクは、低濃度のグループを1.0とした場合0.51となり、統計的に有意に低い結果となった。この関連はこれまでの調査と同様、喫煙等の影響を取り除いても統計的に有意だった。

また、調査開始時の血中β‐クリプトキサンチン濃度の平均値は、低グループでおよそ0.5μM、中グループで1.5μM、高グループで3.5μMだった。調査の結果から、それぞれのウンシュウミカンの摂取量は、低グループでは毎日食べていない、中グループでは毎日1、2個、高グループでは3、4個食べていた。

 

新たな機能表示につながる成果

これまで果樹研究所では、農林水産省委託プロジェクト「安全で信頼性、機能性が高い食品・農産物供給のための評価・管理技術の開発(2006年~2010年)、果樹試験研究推進協議会研究支援事業等により、β‐クリプトキサンチンの骨の代謝に与える効果を明らかにしてきた。また、2013年度補正予算:農研機構「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業」により、ウンシュウミカン中のβ‐クリプトキサンチン含有量の保証技術の開発に取り組んできた。これらの研究成果により、生鮮品として初めて「三ヶ日みかん」が骨の健康に役立つ機能性表示食品として発売されている。今回新たに得られた知見は、機能性表示食品としてのウンシュウミカンの生活習慣病予防効果など、新たな機能表示に繋がるものであり、更なる消費拡大が期待されている。


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