2022年4月7日 青森県子ども発達支援ガイドブックを刊行 弘前大が県と共同で 相談への対応等を掲載

弘前大学と青森県が共同で「青森県子どもの発達支援ガイドブック」を刊行した。令和2~3年度弘前大次世代機関研究の成果の一つとして、地域に貢献するために、弘前大大学院医学研究科神経精神医学講座の斉藤まなぶ准教授らが青森県とともに作成したもの。日常的に乳幼児の発達に関わる職種である保育士や幼稚園教師、相談員、保護者を含めた養育者らが対象。保護者や園の教員から良く受ける相談に現場でどのように対応しているのかについて、応用行動分析に基づいた考え方が掲載されている。ガイドブックを参照しながら日常的に話し合うことで新しい解決方法が見つけることが期待される。ガイドブックは1500部製本され、県内関係各所に無料配布された。

自閉症や情緒障害児学級をはじめとする教育機関での特別支援教育利用者は10年前の約3倍となっており、支援が必要な発達障碍児の割合は6.5%~10%と推定され、国際的にも同じ水準。これに対して、わが国の乳幼児健診での把握率は約1~2%に留まっており、世界的に早期発見と早期支援が有用であるエビデンスが高まるなか、わが国は諸外国と比べて10年の遅れがある状態となっている。

これらの地域の問題に対し、弘前大は2013年度から弘前市と協働して5歳児発達健診を行い、2018年度からは3歳児発達健診も開始した。さらに2019年度の青森県の発達障害児者初診待機状況や、施設利用待機状況の調査にアドバイザーとして協力。不足している医療や施設の問題解決として、2020年度から青森県発達障害専門医医療機関初診待機解消モデル事業を開始することとなった。

青森県の初診待機事業は全国的にみてもかなり早い取り組みで、マンパワーや支援リソースの多い都市型とは違った地域型のモデル。青森市と弘前市でモデル事業が展開され、弘前大医学部附属病院は当初から連携医療機関、医師派遣による地域支援として参画している。

 

明らかとなった診療格差

2年間の事業の利用状況の分析から、保護者の診断へのニーズの高さや自治体による健診体制の格差などが明らかになった。2021年度に青森県が県内全自治体に行った調査で、乳幼児健診での発達障害児の把握率は約2%、半数の自治体で国が推奨するスクリーニングは用いられておらず、9割の自治体でプログラムを用いた保護者支援が行われていないことがわかった。

弘前大と青森県はスクリーニングの導入や診断システムの構築に加え、支援リソースの少ない地域でも日常的に子どもの発達をサポートできるよう、身近で支援できる大人に向けて、ガイドブックを作成する計画を2020年度から立案し、3月に刊行することができた。

ガイドブックは日常的に乳幼児の発達に関わる職種である保育士、幼児園教師、相談員、保護者を含めた養育者らを対象としている。編集委員は学術関係者、自治体職員、相談事業所、当事者団体、保育・教育関係者などで構成され、それぞれの専門性を持った有識者から幅広く意見が寄せられている。

また、保護者や園の教員から頻繁に寄せられる相談に現場でどのように対応すればよいのかについて、応用行動分析に基づいた考え方が掲載されており、ガイドブックを参照にしながら日常的に話し合うことで新しい解決方法を見つけている可能性もあることを紹介している。

ガイドブックは1500部製本され、青森県内の関係各所に無償配布される。青森県のホームページからもPDFとして随時ダウンロードが可能。主に県内機関や保護者向けに作られているが、県外の人々の活用も可能。

表紙のイラストは、発達障害当事者アーティストであるkonomiさんの作品を掲載している。


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