昨今の高齢者は単に寿命が延びただけでなく、総じて元気である。従来「前期高齢者」と呼んできた65歳~75歳はまだ活力があり、勤労意欲も高く、体力や健康に自信のある方が多い。一方、この年代は個人によって老化度に差が大きいのも特徴だ。同じ年齢(暦年齢)でも老けて見える方もいれば、若々しく見える方もいる。暦年齢は必ずしも体の老化度(生物学年齢)を表しているわけではない。生物学的老化指標が明確になれば、老化を遅らせる研究の更なる進歩も期待できる。しかし、今のところ暦年齢以上に人の老化度を適切に表す指標はなく、当分は暦年齢に頼る以外はなさそうだ。
昨年12月内閣府は、技術革新などがなされない場合、2030年には生産年齢人口が1%減少し、日本で低成長が定常化するといった分析をまとめた。その際、高齢者の定義を70歳以上に引き上げることも提案した。自立した生活を続けられる健康寿命を「70歳以上」として経済的・社会的な定義を見直すというものだった。また、今年の新年早々(1月5日)、日本老年学会と日本老年医学会は現在の「65歳以上」の高齢者の定義(1956年WHOが定義)を75歳以上に引き上げるべきとの提言を発表した。
そもそも65歳から高齢者という医学的な根拠はない。欧米の先進国が65歳以上を高齢者としたのは、19世紀後半のドイツ帝国宰相ビスマルクが65歳から年金を支給したのが始まりという。年金支給開始年齢も高齢者の寿命が伸びる今日、ビスマルク時代の65歳に拘ることもあるまい。ところで高齢者の定義見直しは今どうなっているのだろうか。
さて、理想的な生活に徹し「健康で長生き」を実現して105歳で永眠された聖路加国際病院名誉医院長の日野原重明氏は、「75歳を超えて第3の人生が始まる」と言っていた。高齢化の進む今日、75歳という年齢は人生の新たな節目とも考えられる。高齢者の定義など気にすることなく、可能な限り働き続けて第3の人生を目指したいものである。