塩崎恭久厚生労働相は20日、他人のたばこの煙にさらされる受動喫煙を防ぐ対策を強化する健康増進法の改正案に関する談話を発表した。今後に向けては、「国民の健康を第一に、世界に恥じない受動喫煙対策の法案をできるだけ早期に提出すべく、引き続き全力で取り組んでいく」と表明している。法案をめぐっては、飲食店にかける規制について、抵抗していた自民党の勢力と折り合いをつけられず断念していた。
談話では「受動喫煙に伴う深刻な健康被害の実態は、世界的にも科学的に証明されている」と指摘。「『望まない受動喫煙をなくす』という法案の目的をはじめ、多くの点では関 係者の意見の一致をみることができた」と主張する一方、争点となった飲食店の取扱いに関しては、前提となるデータの周知不足やこうしたエビデンスに基づく議論が出来なかったと振り返った。そのうえで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、「過去の開催国が大事に紡いできた『たばこのない大会』という伝統を継承する責任がある」と強調した。
一方、受動喫煙の対策をめぐっては、東京都の小池百合子都知事が率いる都民ファーストの会が、都議選(7月2日投開票)の公約に盛り込む動きを見せている。「子どもの受動喫煙」にフォーカスした内容によって独自色を打ち出す考えで、通学路や子どもが同乗する車内なども対象に罰則付きの条例を設ける見通し。飲食店については、従業員を雇っていない店舗など、一部を除いて原則禁煙にする方針だ。
世界保健機関(WHO)によれば、公衆の集まる場所で屋内全面禁煙の法律がある国は49ヵ国。日本は、4段階の評価で今のところ「世界最低レベル」だという。また、厚労省の調査によれば、受動喫煙によって亡くなっている人は年間1万5000人。こうした被害を防ぐためにも、政府や都民ファーストの会には、妥協のない対策を講じてほしい。