平成29年度もスタ-トして早や1カ月余りが過ぎようとしている。第4次産業革命時代といわれる今日、AI・ロボット・ビッグデ-タ・IoTなどを抜きには日本経済の成長戦略が描ききれなくなった。しかし、それを阻害するのがネットワ-クに対するサイバ-攻撃である。総務省所管の国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)によれば、2016年のサイバ-攻撃関連の通信が前年比2.4倍の約1281億件と過去最高になったという。調査を開始した2005年は約3億1千万件であったのが、14年は約257億件に、15年は約545件と増加が著しい。14年頃からIoT関連への攻撃が目立っている。
政府は、平成29年度のサイバ-セキュリティ関連予算として総額601.4億円を計上している。各省の人材育成に充当する予算額は、総務省が35.1億円で、サイバ-防衛に精通した25歳以下の若者を毎年育成するためNICTに「ナショナルサイバ-トレ-ニングセンタ-」を設置し、20年の東京五輪を見据えた体制づくりに取り組む。初年度の募集人は40人程度で、攻撃を検知・撃退するプログラム開発とノウハウを習得させる。経済産業省は23.5億円で、同省所管の(独)情報処理推進機構(IPA)で電力・ガス会社等の若手社員100名を募り、インフラ攻撃への人材養成に向けて事業を執行中である。
わが国のサイバ-セキュリティ-能力の現状は、「サイバ-防衛世界競技会」での結果に見ることが出来る。競技会は、各国チ-ムでシステムに隠れた答えを探しだすというもので、2014年の競技会に参加した20チ-ム中、日本チ-ムは13位だった。国を挙げて取り組む他国のレベルの高さを思い知らされたという。本年1月末都内で開催された競技会では、予選を勝ち抜いた世界9カ国の24チ-ムが2日間わたって熱戦を繰り広げた。結果は1、2位が韓国で、3位が中国、日本チームの最高は5位だった。前回の12位から順位を上げたものの、まだまだその実力はトップに及ばない現状である。
さて、文部科学省の2016年版科学技術白書によると、統計学などのデ-タ分析専攻の大学卒業生数は、米国の2万4730人を筆頭に、中国の1万7410人、インドの1万3270人、ロシアの1万2300人で、日本は11番目の3400人と人材育成教育の遅れが認められる。AIで世界との競争を目指すための人材不足も否めない。AI、ロボットなどの最先端技術分野における人材は、質的・量的ともに将来不足するのではなかろうかと思うのは考えすぎだろうか。