あきらめない人の車いす。そんな前向きなコンセプトで誕生した「COGY」が注目を集めている。歩くのが困難な人が自分の足で漕ぐ世界初のモデルだ。その新しい発想や操作性、機能性が決め手となり、今年度のグッドデザイン賞で金賞に選ばれた。今月16日に発表された「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016」では、体操・男子団体で金メダルを取ったメンバーや映画「君の名は。」の制作陣らとともに、生みの親の株式会社TESSが優秀賞に輝いている。
TESSは仙台に拠点を置く東北大学発のベンチャー。設立は2008年だ。「障害者の視点に立った独創的な製品の創造」をミッションに掲げ、ペダルの付いた車いすの開発に力を入れてきた。「COGY」は今年6月から国内外で本格的に展開。販売やリース、レンタル、施設への導入など複数のアプローチで普及を図っている。
最大の特徴は、障害者のリハビリの一環となる機能だ。日常生活の移動を支えるだけでなく、足を動かすきっかけとしても働くように作られた。麻痺などで歩行が難しくても、どちらかの足で少しだけペダルを踏み込むことができれば、自転車のように両足で漕げる可能性がある。ペダルは僅かな力で前へ出る構造。片方の足を動かせば、もう一方も連動して自然に動いていく。脊髄から出る反射的な指令に着目し、それを最大限に活かす設計となっている。方向やブレーキの操作は左手のハンドルで行う。「ペダルを漕ぎながらハンドルを回す。それだけで自由に向きを変えられる」という。
グッドデザイン賞の選考プロセスでは、「自分の足を使って自由に動く喜びを提供するとともに、より安全なリハビリ方法にもなっている。車いすの新たな可能性を拓いた」と評価された。「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016」の表彰式で登壇したTESSの鈴木堅之代表取締役は、「ペダルを一歩踏み出せば、新しい世界が広がっていく。多くの人に体験してもらいたい」と呼びかけた。効果には個人差がみられるというが、高齢化がさらに進む今後は一層役立つと期待されている。