筑波大学は9月30日、脳卒中によって低下した歩行機能を回復させる新たな治療法の確立に向けて、CYBERDYNE株式会社のロボットスーツ「HAL」を使う治験を始めたと発表した。国からの後押しも受けながら、茨城県内の病院など7施設で実施していく計画だ。有効性を明らかにするエビデンスを積み上げ、医療機器としての承認を目指す。
CYBERDYNEが開発した「HAL」は、からだの動きを補助、拡張、改善できる装着型のロボット。皮膚にはり付ける高性能のセンサーで、脳から筋肉へ送られる微弱な信号を素早く正確に読み取り、利用者がしたい動きを把握する。それに合わせてパワーユニットが動作をアシストする仕組みだ。ひとりでうまく歩けない人が使えば、正しい感覚が身に付いていき能力の再獲得につなげられるという。「HAL」の「両脚モデル」はすでに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病の医療機器として国に認められている。
厚生労働省によると、脳卒中は介護が必要になる原因として最も多い疾患。国内の患者はおよそ118万人にのぼる。
筑波大学では2013年から、脳卒中を想定した臨床研究を重ねてきた。「これまでの限界を超えて、更なる回復を期待させる結果を得ている」と説明している。今回の治験に用いる「HAL」は、片麻痺の状態に合う「単脚モデル」。通常のリハビリだけでは十分な歩行機能が戻らない人に協力を得て、5週間にわたり実際に使ってもらう。
今後の超高齢化社会を乗り切るには、医療・健康分野でのイノベーションが不可欠。今回の治験は、日本が抱える大きな社会的課題の解決の一助になることを期待されている。