新型コロナウイルスの国内での感染拡大以降、社会や経済、日々の生活は一変した。しかし、収束は未だ見えず、暮らしに不安を抱えている人も少なくない。また、日常の急激な変化や将来への不安などは、人々の心にも大きなストレスを与えている。
こうした中、農研機構、筑波大学らの研究で、ストレスの緩和に花の観賞が有効であることが実証された。
研究では、実験参加者に不快な画像を見せて心的ストレスを負荷し、その後花の画像を見せたところ、不快な画像によって生じた恐怖や嫌悪感などのネガティブな情動が減少し、ポジティブに転じた。上昇していた血圧は3.4%低下し、その低下幅は花以外の画像を見せた時に比べて有意に大きかった。また、ストレスによって上昇するホルモンの値が花の画像によって21%低下することが確認された。
さらに、実験参加者の脳活動の解析を行った結果、花の画像を見ることによって情動の生起に関わる脳領域である扁桃体の活動が抑制されることが明らかになった。実験参加者は、「花」という刺激に惹きつけられることで、ストレス源であった不快画像から注意が逸れたと推察され、その結果、ネガティブな情動を生起させていた扁桃体領域の活動が減少し、身体に生じていた、血圧やホルモンの上昇といったストレス反応も緩和したと考えられる。
この研究結果は、「花の癒し効果」を心理的、生理的、脳科学的に実証したもの。新型コロナウイルスなどの影響で、以前のように思うようにストレスを発散することが難しい中、日常生活に花を取り入れることで、部屋を飾ることだけでなく、心への良い影響も期待できる。