今年はアポロ11号の月面着陸50周年の年で宇宙探査などの話題で盛り上がっている。1969年7月20日アポロ11号が人類史上初めて月面に降り立った。アームストロング船長とオルドリン飛行士が乗り込んだ着陸船は月周回船から放れ月に着陸。月面で「人間にとって小さな一歩だが、人類にとって偉大な飛躍である」の名言を思い出す。そして着陸船はコリンズ飛行士の待つ周回船にドッキングして地球に帰還したのである。今再びNASAは月を経由して火星に人を送り込む計画で未知への挑戦を構想している。
1957年旧ソ連が初の人工衛星打ち上げに成功した。所謂米ソ冷戦時代の「スプートニク・ショック」である。1961年ケネディ大統領は月面着陸で巻き返しを誓いアポロ11号の偉業を成功させた。今やトランプ大統領が脅威と見なすのは中国である。トランプ米政権は宇宙開発で国際連携を強化する。今後始める月有人探査も日本や欧州と連携する一方で、中国抜きで進める方針だ。今年1月に中国が人類初の月の裏側に探査機を着陸させるなどその台頭が著しく、月探査に関しては中国が米国を一歩リードした格好だ。中国の宇宙開発技術の伸張に対する米国の焦りとも受け取られかねない。
ところでインドが7月に打ち上げた無人月面探査機「チャンドラヤーン(月への乗り物)」は、月の南極付近に軟着陸させる計画で、旧ソ連、米国、中国に次ぐ4カ国目を狙っていた。中国の月の裏側への着陸を成功させたことに対抗するインドの動きであった。残念ながら着陸には失敗したようだ。
さて、中国の五星紅旗を月面に打ち立てる有人探査に対抗するため、一時期「火星に行く」と言っていたトランプ大統領も月へ目標変更した。米国は2024年までに再び有人月面着陸を実現する「アルテミス計画」を打ち出した。そして将来の火星探査の拠点として月を回る新たな宇宙ステーション「ゲートウェー」へとつなげる構想である。かつての米国VS旧ソ連の競争が、今や米国VS中国の競争となった。更にはイスラエルやインドなど宇宙開発新興国が加わり、その競争モードのスイッチは一段と高まろうとしている。アポロ計画の当時、未来を展望し困難だが実現すれば大きなインパクトが期待でき、人々を魅了させる野心的な目標を達成することを「ムーンショット」と呼んでいた。人類の月面再着陸の挑戦は、まさに技術こそが未来の成長と繁栄を生む時代の象徴といえるかもしれない。