今年の夏、例年通り習近平国家主席他現役指導者と長老らが中国の重大事項を話し合う「北載河会議」は河北省の海辺の保養地で行われた。会議の最中人民元が下落して11年ぶりの1ドル7元台となった。長老から現役指導部に出された表向きの注文は、失業率の改善による人民の不満解消といわれている。しかし、その裏では習指導部に対する長老や党内の「非習派」から激しい反発批判があったようである。
中国共産党の規定では、200人強の中央委員と170人強の中央候補員らが集う中央委員会総会は年1回以上開くことになっている。国家主席の2期10年の任期制限を撤廃する憲法改正した2018年3月の全国人民代表会議(国会に相当する会議)。この全人代に先立ち変則的に「2中全会」「3中全会」開催しているものの、その年の秋に開く予定の「4中全会」は未だに開催されない。その背景には「北載河会議」での抜き打ち的な憲法改正による国家主席の任期撤廃への反発批判から、習指導部が総会開催を躊躇しているともいわれる。まさに党内における権力闘争の激化が邪推されるところであったが、約1年遅れの「4中全会」は10月開催されそうだ。
ところで米中両首脳が6月末、大阪で開催されたG20サミットでの会談で貿易戦争の一時休戦に合意。にもかかわらず米国が中国製品に追加関税で再び通商・通貨政策による報復合戦にエスカレートしている。米中のハイテク冷戦の最中、トタンプ政権は8月9日、「中国企業ファーウェイなど5社からの政府調達を禁じる米国防権限法を適用する」公表。中国が求める禁輸措置の全面解除にはトランプ政権は応じない構えで、米中貿易戦争は長期化の様相である。今や習政権は内憂・外患の大きな試練に直面している訳だ。
さて中国語で「逢九必乱」という言葉がある。西暦で末尾に9がつく年に動乱や戦乱が起きるという意味である。全く終わりが見えない米中新冷戦に伴う中国経済の低迷による人民の不満と、加えて香港の「逃亡犯条例」を巡る抗議活動は条例改正案の撤回にも拘わらず収束する見通しも不透明な状態だ。習政権の対処如何では「逢九必乱」の火種ともなりかねない。2019年ジンクスのタイムリミットも余すところ4カ月弱となった。今年の市場関係者の「びっくり予想」の中に、中国景気の悪化で共産党への反発激化から政変勃発といった予想もあった。ただその的中率は3割程度に過ぎず、ハズレがほとんどなのだが。