昨年末、英国科学誌ネイチャーは、2018年に科学分野で話題になった10人を発表した。日本からは小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションマネージャを務めるJAXAの吉川真准教授が選ばれた。「小惑星から試料を持ち帰る大胆な事業を率いる天文学者」と紹介されている。即ち、世界中の科学者の間で「はやぶさ2」の活躍が注目されていることに他ならない。
2014年12月打ち上げた「はやぶさ2」は、地球の重力で進路を変えるスイングバイ航法で、2018年6月小惑星「リュウグウ」に到達した。地球を出発して3年半かけて約3億Kmを飛行した訳である。その自律制御技術の難度について、「日本からブラジルにある直径6cmの的を狙うようなもの」と例えている。これまで、「はやぶさ2」から直径18cm・高さ7cmの探査ロボットを2台投下。プロジェクトチームは、2台のロボットに知恵の象徴であるふくろうに因んで、仏語の「イブー」と英語の「アウル」とそれぞれ命名。「リュウグウ」への着陸適地探しでコントロールし、2箇所の候補地を選定した。JAXA相模原キャンパスにある管制室から約3億Km離れた「はやぶさ2」に指令を出しているのだが、通信に約20分かかるという時差の克服と機体の状態などを把握した瞬時の判断が求められる。
ところで同じ時期に米航空宇宙局(NASA)も2016年9月、「オシス・レックス」を打ち上げて「リュウグウ」とそっくりの小惑星「ベンヌ」を探査。昨年末小惑星への到達に成功している。2020年夏以降に小惑星への着陸により試料採取して2023年9月に地球帰還計画を発表している。まさに日米両国の小惑星探査に向けた夢の競演といった様相である。
さて、現在「はやぶさ2」は、「リュウグウ」の上空100Km付近で飛行中である。愈々、22日午前8時頃に第1回目のタッチダウン(着陸)を行う。機体から延びる筒状の装置の先端が小惑星の地表に触れると小さな弾丸を発射する仕組みで、舞い上がった砂埃を採取する。延べ3回の試料採取した後、11月から12月頃に「リュウグウ」を出発して2020年末に地球に帰還する予定である。小惑星「イトカワ」の探査から帰還した先代「はやぶさ」の快挙を今一度の思いである。「はやぶさ2」の「リュウグウ」からのお土産である採取した試料から太陽系の進化や生命誕生の謎が解明されることに期待したい。