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2018年7月2日 IGSは地上の真実を見ている

先月12日、情報収集衛星(IGS)「レーダー6号」を搭載するH2A39号機が種子島宇宙センターから打ち上げられ軌道投入に成功した。その運用は数カ月後の秋頃に始まるそうだ。約5年半前の2013年1月にH2A22号機で打ち上げられた「レーダー4号」の設計寿命切れに伴う後継機となる。現在運用中のIGSは、地上の物体をカメラのように撮影する光学衛星2機と、夜間や曇天でも地上を撮影できるレーダー衛星4機である。将来的には10機体制の整備を目指している。

ロケットや人工衛星といった宇宙開発は、軍事に直結する技術である。第2次大戦の敗戦国故に、わが国は戦後航空機やロケットの研究開発を禁じられた。その制裁が解除され、ペンシル型ロケットを飛ばした頃、米ソは有人人工衛星の打ち上げ競争の最中であった。まぎれもない後発組のわが国を覚醒させたのが北朝鮮のミサイルであった。1998年8月31日北朝鮮のテポドンミサイルが東北地方上空を通過して、三陸沖の太平洋上に落下する事件が発生。政府は2カ月後,自前のIGS保有を決定した。JAXAの前身である宇宙開発事業団と三菱重工業でH2A試験1号機の開発に着手して、2003年3月にはH2A5号機でわが国初のIGS「光学1号」と「レーダー1号」を打ち上げた。そして今回の打ち上げに至っている。今や米中をはじめ世界各国が宇宙ビジネスで凌ぎを削っている。わが国の宇宙機器産業の代表であるH2Aロケットの信頼性、並びに宇宙利用産業のGPS測位精度やIGSの画像解像度は世界のトップレベルにある。

ところで今回の打ち上げでIGSの軌道投入の日が、米朝首脳会談と同じ日であった。単なる偶然かも知れないが、IGS保有の決断の契機がノドンミサイルの飛来であったこともあり、よくよく北朝鮮との因縁があるものだと思わざるを得ない。防衛や外交など安全保障に関わる情報収集をはじめ、大規模災害時の現状把握に不可欠となったIGSの画像情報である。その収集能力と分析力が成否を決する。それに関連して思い出されるのが1983年9月の大韓航空機撃墜事件である。ソ連の戦闘機パイロットと基地の交信記録を自衛隊が傍受していた。原則的には情報収集能力を公表することはないのだが、政府は政治的判断として交信記録を公表し真相を明らかにした。自衛隊の情報収集力と分析力は高く評価されたものの、その後の通信傍受活動には影響を及ぼしたようだ。

さて、米朝首脳会談に先立ち、北朝鮮は核実験に使用したトンネル爆破を各国の報道陣に公開した。爆破したトンネルが核兵器廃棄に向けた有効な施設であるかどうかは、IGSによる定点画像データーの経年変化をみれば一目瞭然である。米国もわが国も北朝鮮の核廃棄の本気度を分析済であろう。首脳会談でも外交交渉でも手の内にある真実は明かさない。いずれにせよIGSは地上の真実を見ている。

(注) IGS:Information Gathering Satellite GPS:Global Positioning System


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