政府はこのほど、「平成27年度水循環施策」(水循環白書)を閣議決定し、公表した。水循環に関する施策を総合的かつ一体的に推進するために制定された水循環基本法の規定に基づく初めての白書であり、水循環の現状と課題や、昨年7月に閣議決定された水循環基本計画に盛り込まれた施策の取組状況を報告している。
水循環施策をめぐる動向について、我が国の年降水量は世界平均の約2倍である約1700ミリであるが、国土の中央部に脊梁山脈がそびえていること等によって、降水量は地域的、季節的に偏在していることを指摘。
また、生活用水、工業用水、農業用水として平成24年に取水された量は、約805㎥(=0.008万㎦)で、琵琶湖約3杯分に相当するとした。
一方、人と水循環の関わりについて、水道の普及率は25年度末時点で97%超となり、全国どこでも安心して水道水を直接飲むことが可能となっており、水力発電は、戦後の復興期の電力需要を支え、今日においてもクリーンエネルギーとして重要な役割を担っていることも記述している。
その上で、これまで、水循環に関する施策は、それぞれの主体が個別の目的や目標を有していたが、関係者間で課題に対する共通認識をもって将来像を共有することが重要としており、今後、流域単位を基本に、各主体が水循環に関わる様々な分野の情報を共有し、課題に取り組むことが重要との考えを示した。
また、人口規模などの社会構造が変化する中、水インフラの運営、維持管理、調査・研究、技術開発など、今後の水循環に関わる人材不足への対応も求めている。
水の適正な利用と水の恵沢の享受の確保についても提言しており、水インフラは、高度成長期以降に急速に整備され、今後一斉に更新時期を迎えることから、適切なリスク管理を行いつつ戦略的な維持管理・更新等を図っていくことが必要としている。
また、雨水を利用している公共施設や事務所ビル等は全国で1937施設(25年度末)。雨水利用量は年間およそ792万㎥で、全国の水利用量の約0.011%に相当することも記述している。
水環境については、河川における水質環境基準(BOD)の達成率は約92%(25年度)と長期的にみると上昇傾向にある一方で、湖沼では水質環境基準(COD)の達成率は15年度に初めて50%を超え、25年度は約55%となったことを記述。このため、水の利用における健全な水循環の維持を求めた。
国際的協調の下での水循環に関する取組については、依然として世界全体で約6.6億人が安全な飲料水を継続的に利用できない状態であり、約24億人がトイレ等の衛生施設を継続的に利用できない状態にあることを指摘している。
水循環基本計画の策定
白書ではまた、26年4月2日に公布、7月1日に施行された水循環基本法に基づき、昨年7月10日に水循環基本計画が閣議決定されたことを記述。
この計画は、今後10年程度を念頭に置きつつ、27年度からの5年間を対象として策定されたもので、流域連携の推進や水の適正かつ有効な利用の促進等の9項目についてそれぞれ総合的かつ計画的に推進することを定めている。