人工知能(AI)を駆使して今後の超高齢社会の課題を解決するサービスを展開していく −− 。そうしたビジョンを掲げるスタートアップのエクサウィザーズがこのたび、産業革新機構やSOMPOホールディングスなど8社から総額8億9000万円の資金を調達したと発表した。
認知症ケアのエビデンス・ベースド化を目指す。実際にどんな介護が行われ、利用者はどんな反応をみせたのか? その人らしい穏やかな生活を送れるようになっているのか? 現場から様々な情報を収集・蓄積し、科学的な裏付けに基づくサービスの確立につなげていく計画だ。自治体が保有するデータの解析も行う。「介護費などの社会的コストを民間主導で低減していく」と意欲的だ。
「時間の経過とともに症状が進行していく認知症は、ケアの介入効果を検証することが難しいのが現状。そこでAIの研究者が立ち上がった」。エクサウィザーズの石山洸代表取締役社長はそう話す。ビッグデータを紐解くことで、介入すべき最適なタイミングを予測できるようにしていく。それに基いて実際に介入した効果を把握。多くのケースを比較してより有効なケアの推進につなげるなど、「予測~介入~評価」のサイクルを作っていく構想を描いている。
エクサウィザーズはこれまで、フランス発祥の認知症ケア技法「ユマニチュード」の普及に取り組んできた。熟練者はどんなアプローチを実践しているのか? その特徴を明らかにし、初心者との違いを「見える化」することで人材育成の精度を高める「コーチングAI」の開発も進めている。今回のラウンドを契機に、こうした取り組みのスピードをさらに上げていきたいという。SOMPOケアグループの施設などで積極的に導入し、今後の事業の拡大につなげていく方針だ。
石山代表取締役社長は、「サービスの質の向上や介護職員の負担軽減を実現したい。急増する介護費の効率化にも結び付けられる」と強調。産業革新機構の濱邉哲也専務取締役は、「先端的な技術を用いて社会課題の解決を図る案件。非常に意義の大きな投資だと認識している」と述べた。