産業革新機構とアニヴェルセルHOLDINGSが13日、動画を活用してサービス業のOJTを効率化するクラウドサービス「ClipLine」を手掛けるClipLineに対し、総額で6.1億円を出資すると発表した。主に医療・介護分野の市場開拓を加速するリソースとして使われる。
店舗によってサービスの質にバラつきが出てしまう −− 。現場への指示がなかなか正確に伝わっていかない −− 。
ClipLineはこうした課題を解決するためのプラットフォームだ。ローンチは2014年。吉野家や養老乃滝グループ、高島屋といった外食・小売を中心に展開し、これまでに国内の約3000店舗、およそ5万人が利用しているという。すでに一部で導入を決めたところも出ているが、今後は医療・介護分野でユーザーを増やしていきたい考えだ。
日々の業務に欠かせないスタンダードな技術・知識を、短い動画(クリップ)を通じて共有できることが最大の特徴といえる。例えば料理の盛り付けや商品の包装。熟練した指導者が行っているシーンを撮影し、見本のクリップとしてクラウドにあげておく。新人の職員はそれを繰り返し見て学び、近くの人に自分を撮ってもらいながら実践。そのクリップを投稿すればチェックを受けられる。新人の実践をみた指導者は、テキストでアドバイスしたり「いいね!」を押したりすることが可能。仲間の職員も参加して同様にリアクションできる。仕事のノウハウの伝達に重きを置いた社内の動画SNS、というイメージだ。現場から生まれた新たなアイディアを含むハイレベルな実践を見本クリップとするなど、優良事例をシェアするツールとして使える点もポイントとなる。
ClipLineはこうした機能を介護施設・事業所でも活かせるとみている。業務の効率化やコストの低減、人手不足の緩和、職員のモチベーションアップなどにつなげられると売り込む計画だ。拠点の数が多い大手の事業者などを中心にニーズがあるとにらむ。
産業革新機構の丹下智広ベンチャー・グロース投資グループマネージングディレクターは、「今後の介護の需給ギャップを解消していくには生産性向上が不可欠。ClipLineはその一助になるのではないか」と説明。
ClipLineの高橋勇人代表取締役は、「すでに介護は喫緊の社会課題。多くの人が必要な技術を無理なく身につけられるように支援していければ」と話している。