政府は、一億総活躍社会実現の一環として、新年度から思い切った「高等教育進学サポートプラン」を打ち出している。
奨学金事業の大幅拡充などを核として、意欲と能力のある若者が経済的理由により大学や大学院、専門学校などへの進学を断念することがないよう進学を後押しする。また、誰もが安心して返還できるよう支援を充実。安心して奨学金を利用するための情報提供と相談体制を拡充する。
経済的理由により修学困難な学生に対しては、独立行政法人日本学生支援機構が大学等奨学金事業を実施しており、特に家計が急変した学生には、無利子の緊急採用奨学金や、有利子の応急採用奨学金の申込みを随時受け付けている。各国公私立大学において既に授業料減免などの支援策を実施している。
きめ細やかな配慮を
文部科学省では、進級に当たり授業料などの納付が困難な学生や支援を必要とする学生とその保護者が支援策を活用できるよう、全国の国公私立大学や都道府県教育委員会などに対して周知を図るよう要請している。
その中で、入学料といった初年度納付金や授業料納付が困難な学生に対しては、納付時期の猶予など弾力的な取扱いを図り、入学時に一時的にかさむ費用の支出が困難な学生に対しては、学生支援機構の入学時特別増額貸与奨学金の活用について周知を図るなど、きめ細やかな配慮を求めている。
また、平成30年度予算案では、意欲と能力のある学生が経済的理由により進学を断念することがないよう、学生が安心して学ぶことのできる環境整備のため、①給付型奨学金制度の着実な実施や、②無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員への貸与の着実な実施、③大学院業績優秀者奨学金返還免除制度の拡充を行うとともに、④奨学金の利用等についての理解を促進するためスカラシップ・アドバイザーを高校へ派遣するなど、大学等奨学金事業の充実を図ることとしている。
専門学校は実証研究に取り組む
専修学校専門課程(専門学校)については、給付型奨学金を含む大学等奨学金事業による支援に加えて、平成30年度予算案においては、29年度に引き続き、経済的理由により修学困難な専門学校生に対する効果的な修学支援策を検討するため、「専門学校生への効果的な経済的支援の在り方に関する実証研究事業」に取り組む。
今年度から先行実施している給付型奨学金は、非課税世帯で一定の学力・資質要件を満たす学生らを対象とし、来年度の給付月額は、私立自宅外生4万円、国公立自宅外生・私立自宅生3万円、国公立自宅生2万円。給付規模は進学者2万人を見込んでいる。
また、すでに今年度から基準を満たす希望者全員が無利子奨学金を借りられるようにしているが、従来、評定平均値3.5以上という要件を満たす必要があった低所得世帯の無利子奨学金の成績基準を新年度から実質的に撤廃し、評定平均値を満たさなくても借りられるようにする。
返還プランについても負担軽減策として、返還月額が卒業後の所得に連動する「所得連動返還型奨学金制度」を導入。卒業後の返還月額は、例えば私立・自宅生で月額5.4万円借りた場合、従来の1万4400円が最低2千円からとなる。
有利子奨学金の貸与利率の下限引き下げを行い、見直し前の下限0.1%を見直し後には0.01%とする。市場の低金利の恩恵を受けやすくし、返還利子負担を軽減しようというもの。事情により返還できない阿合は、奨学金の返還期限を先延ばしにできる「返還期限猶予制度」もある。
わが国経済は穏やかに回復してしるが、さまざまな理由から依然として経済的に厳しい状況にある学生も少なくない。多種多様なイノベーションを生み出す活力豊かな日本社会を維持発展させるためにも、有意な人材に高等教育を受ける機会の確保は必須だろう。