2016年5月11日 中学時代に勤勉性獲得→収入増 東大社研教授らが調査、その差「70万円」

中学生時代に身に付けることができた勤勉性やまじめさ、忍耐性が、将来の労働所得を向上させることが、東京大学社会科学研究所教授らによる働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査の分析で明らかとなった。最大60万円から70万円の年収差が生じているという。また、東大社研教授らは、結婚観に関しても分析。結婚のメリットを強く感じている人の方が、デメリットを重く見る人に比べて早く結婚に至っていることがわかった。

調査分析を行ったのは、東大社研の石田浩教授らの研究グループ。同グループでは働き方とライフスタイルに関する全国調査を、2007年から毎年行っている。同一の人々に繰り返し尋ね続ける「パネル調査」という手法を用いている点が特徴で、同じ個人を追跡することにより、一人ひとりの行動や意識の変化を跡付けすることができる。

今回は2015年調査結果をもとに、①勤勉性、まじめさといった「非認知的スキル」の経済的効用、②正規・非正規の雇用形態の違いと仕事の負担、③結婚・家族・ジェンダーに関する意識や未婚理由とその後の結婚活動の関連―などについて分析した。

 

勤勉性獲得→高い学歴→高い所得

ここ数年の研究により、IQや計算力、論理力といった「認知的スキル」だけでなく、勤勉性、忍耐力、従順さなどの非認知的な特性に関しても、いわゆる社会・経済的成功と関連があるとされている。

研究グループは、調査対象者に対して、勤勉性、まじめさ、忍耐力について、自身の中学生時代の状況を4段階で評価してもらった。その結果、非認知的スキルの度合い別に個人の平均年間所得を比較すると、最も評価が高いグループと低いグループの間で、60万円から70万円の差がみられた。

非認知的スキルと所得の関連は、特に男性で大きく、研究グループではこの分析結果について「『高い非認知的スキル→高い学歴達成→高い所得』という経路で大部分が説明できた」と評価。一方、獲得された非認知的スキルの差は、生まれ育った家庭の要因ではうまく説明できなかったという。

 

正規・非正規、残業の有無に差なし

正規・非正規の雇用形態に関する分析は、ここ数年、非正規雇用の増加と正規・非正規の報酬の格差が社会的問題となっていることを踏まえて行ったもの。報酬格差の一部は、正規雇用の従業員には突然の残業や休日出勤という仕事の負担があるからとされているが、調査によると、「突然の残業がある」と答えた男性の比率は、正社員が35.2%であるのに対して、パート等29.0%、派遣社員31.6%とほとんど差はない。一方、「突然の休日出勤」に関しては、正社員22.2%に対して、パート等14.0%、派遣社員5.3%と差がみられた。

 

「まだめぐり合わない」で遠のくマリアージュ

また研究グループは、結婚や家族に対する考え方に関しても分析した。非婚化・晩婚化の背景のひとつとして、結婚生活から感じられるメリットの減少など、結婚観の変化が指摘されているが、2007年に未婚で婚約者がいない人々を対象にした調査では、「結婚している方が幸せ」と回答した人は、その後に結婚しやすいことがわかった。

しかし、こうした結婚観にかかわらず、「適当な相手にまだめぐり合わないから」と思っていると、男女とも結婚に結びにくく、さらに、男性は「結婚後の生活に不安がある」、女性は「今は趣味や娯楽を楽しみたいから」と思っているほど、その後に結婚しにくい傾向であることが明らかになった。


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