2018年1月12日 防災科研が計算システム開発 新潟大、京大と共同で 雪おろしの判断材料に

国立研究開発法人防災科学研究所(林 春男理事長)は、新潟大学(高橋 姿学長)、京都大学(山極壽一総長)と共同で、積雪荷重計算システムを開発した。積雪時の雪下ろしの判断に役立つもので、防災科研では、このシステムを用いて推測される積雪重量分布情報を『雪おろシグナル』と命名。1月9日から新潟県の協力を得て運用を開始した。

この『雪おろシグナル』を活用することで、積雪の高さだけではわからない積雪荷重を知ることができるため、家屋等の建造物の倒壊を防ぐ雪下ろし作業のタイミングの判断に役立つことが期待される。防災科研と新潟大、京大では今後、この試みを全国の降雪地域で活用することを目指している。この取組は、防災科研が推進する積雪モデルの研究が屋根雪対策に活用される初の事例となる。

 

雪氷災害犠牲者、毎年100名

雪氷災害は毎年100名前後の死者を出しており、このうち屋根雪処理中の滑落など、除雪中の事故は半数以上にのぼる。また、過疎高齢化が進行する中山間地域では、人手不足のため雪下ろしが困難になり、雪の重みによる空き家の倒壊が後を絶たない。

こうした状況を踏まえ、防災科研では、スイスで開発された積雪変質モデル(SNOWPACK)を改良・応用し、複数の機関で観測されている気象データや積雪深野データヲ解析して積雪の重量を計算するシステムを開発。このシステムを活用して、雪下ろし作業のタイミングを適切に判断することにより、雪氷災害の軽減を目指している。

新潟大災害・復興科学研究所と京大大学院工学研究科では、全国の積雪量を把握するためにweb上で公開されている気象庁、自治体、国土交通省、研究機関等の積雪深の情報を収集して分布図として示す準リアルタイム積雪分布監視システムを開発・運用してきた。防災科研と新潟大、京大では、同システムで収集された積雪深とSNOWPACKを組み合わせて、新潟県内で観測されている積雪深から屋根に積もっている積雪の重量を推測する積雪荷重計算システムを共同で開発した。

 

積雪密度は時々刻々と変化

積雪重量の観測は、高価な設備を必要とする多地点で展開するのは困難。一方、積雪深は比較的安価に測定することができ、複数の機関で測定されたデータが公開されている。しかしながら、積雪は密度が時々刻々と変化するため、積雪深から積雪重量を見積もるのは困難であった。

同システムでは、気象観測データと、新潟・京都両大学が開発した準リアルタイム積雪分布監視システムによって集約された複数機関の積雪深情報を組み合わせて、任意の場所での積雪重量を出力。その情報をもとに、積雪重量の分布図を作成するとともに、雪下ろし実施日からの差分をとることで、任意の日時、場所で雪下ろしを行った場合、積雪重量が現在どのぐらいかを見積もることができる。

 

色別で危険度を表示

屋根雪荷重とか家屋倒壊の危険性に関しては、個々の家屋の強度によるが、一般的に積雪深が1メートル以上だと雪下ろしが必要だと言われている。建築業界が使われている積雪密度に当てはめると、同システムで表示される値としては、1平方メートルあたり300kgとなるが、『雪おろシグナル』では、「1平方メートルあたり300kg~500kg」は〝黄色〟で表示し、注意を促す。さらに、「500kg~700kg」は〝橙〟、さらに建物倒壊がみられる積雪重量である「700kg~1000kg」は〝赤〟で示し、警告することとなっている。

雪おろシグナル』は、新潟県のホームページから見ることができる。


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