東京商工リサーチはこのたび、2017年の1月から9月に倒産した医療・福祉事業が累計で186件に達したと報告した。前年同期の155件からは20.0%増と高い伸びを示している。月平均の発生件数は20.6件。このペースで推移した場合、年間の倒産件数は、介護保険法が施行された2000年以降で最多の250件に近づく可能性が高いという。そんな中、来年4月に控える診療報酬と介護報酬の同時改定は、医療費と介護費の抑制圧力が高まる中で、医療機関や介護事業者には厳しい内容になることが予想されていると指摘。医療・福祉関連業界では、これまで以上に淘汰の波が強まることも危惧され、今後の動向から目を離せないとしている。
負債総額は、326億700万円(前年同期比82.5%増)と、9月の時点ですでに前年の306億4500万円を上回った。これは、負債が10億円以上の大型倒産が8件と、前年同期の4件から倍増したことが要因。ただし、全体をみると負債が1億円未満の小・零細規模が155件(83.3%)と8割以上を占めており、小規模企業が件数を押し上げている。
「老人福祉・介護事業」の倒産件数は71件で、前年同期の77件から7.7%減少。ただ、2年連続で年間100件越えの可能性を残し、高止まりで推移していることに変化はないとしている。そのほか業種別では、マッサージ業、整体院、整骨院、鍼灸院などを含む「療術業」が57件(前年同期比50.0%増)、「病院・医院」が22件(同29.4%増)、「障害者福祉事業」が18件(同125.0%増)と増加が目立った。
■「老人福祉・介護事業」の原因 「事業上の失敗」が2割
倒産の原因では、販売不振(業績不振)の104件(前年同期比4.0%増)が、全体の55.9%と過半数を占めた。業種ごとにみると、「老人福祉・介護事業」も販売不振が32件と4割強を占める一方で、「事業上の失敗」が17件と23.9%で2割に達していた。東京商工リサーチは、安易な起業や本業不振のため異業種からの参入失敗など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まったケースが多いのではないかと分析している。