京都大学は、妊娠期におなかの皮膚が伸びて広がる仕組みを、マウスを使った実験で明らかにした。高い増殖能力を持つ細胞集団が出現することが影響しているという。研究成果は、英科学誌「Nature Communications」(電子版)に11日付で掲載された。
皮膚は体系の変化に応じて柔軟に拡張・収縮する機能を持つが、妊娠時に母体の急速に膨らむ詳しいメカニズムは、これまでわかっていなかった。
実験では、妊娠したマウスと妊娠してないマウスの腹部の皮膚を比較。妊娠している方の腹部表皮の奥に、高い増殖能を持つ細胞集団が出現すること確認した。細胞集団は妊娠12日から16日にかけて増加。それに合わせて細胞分裂が起こり、急速な表皮の拡張が起こることも判明した。
この細胞集団は、妊娠していないマウスでは確認できないほか、働きを抑制させることで妊娠しても皮膚が広がりにくくなることもわかった。
■ 治療への応用の期待も
一方、別のマウスを使った実験では、皮膚が傷ついたときにもこの細胞集団が表れ、からだの治癒を促進することがわかった。働きを促進するタンパク質を注射したところ、傷の治りが早くなったという。結果を踏まえ、研究を主導した豊島文子ウイルス・再生医科学研究所教授は、「この細胞集団は、妊娠期の皮膚拡張や傷の治癒を促すことから、再生医療への応用展開につながる可能性がある」と期待を語っている。