2017年9月5日 東北大が企業と実証運転 電力・水素複合エネ貯蔵システムで

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業で、東北大学と(株)前川製作所は、水素貯蔵システムと電力貯蔵装置を組み合わせて、通常時の再生可能エネルギーの有効利用と非常用電源としての機能を併せ持つ「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を新たに考案・開発し、仙台市茂庭浄水場で実証運転を開始した。燃料電池や水電解装置の制御性・耐久性や、長時間連続運転に適した電力貯蔵システムの運転制御方法などに関する実証事業を行う。再生可能エネルギーから得た電力を用いて水素を製造、利用する〝パワー・トゥー・ガス〟の一形態である同システムの実用化により、災害時に停電が発生しても安定して継続運転が可能な次世代の浄水場の実現を目指す。

 

災害時でも継続可能な浄水場を実現

東日本大震災時は、非常用電源として、多くの自家用発電機が使用されたが、メンテナンス不足による動作不良や燃料不足など、さまざまなトラブルが発生した。仙台市でも、1978年の宮城県沖地震の経験から、主要な浄水場には24時間の停電に対応可能な非常用自家用発電装置を設置していたが、東日本大震災時は、停電時間が24時間をはるかに上回り、県内の石油備蓄基地の被害や物流の遮断により燃料確保が困難を極め、浄水場の機能維持に大変苦慮する結果となった。

また、福島第一原子力発電所の事故を受け、地球温暖化対策とエネルギー政策の両面から、再生可能エネルギーの利用拡大が進められているが、2012年にスタートしたFIT法により、再生可能エネルギーの導入量、特に太陽光発電については予想以上のペースで増加しており、系統への接続が保留されたり、新規接続契約が停止されるなどの課題が顕在化しつつある。

このような背景の下、NEDOは、2014年度から「水素社会構築技術開発事業」の1テーマとして、仙台市水道局協力のもと同市茂庭浄水場をモデルに水素を利用して安定的なエネルギーを供給するための技術開発を実施している。

同事業では、経済・技術成立性を見通す全体コンセプトを検討し、これに基づく技術の検証を行っている東北大と(株)前川製作所は、大容量化や小型化に優れた水電解装置・燃料電池・水素貯蔵システムと、耐久性、即応性、高効率性に優れた電気二重層キャパシタ等の電力貯蔵装置を組み合わせた新しいシステムを考案・開発した。

新規開発した「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」は、平常時の太陽光発電の有効利用だけでなく、非常時のエネルギーの長時間安定供給も可能にするもの。さらに今回、仙台市茂庭浄水場の20キロワット太陽光パネルを用いた実証システムが完成し、実証運転を開始した。

再生可能エネルギーから得た電力で水素を製造、利用するシステム(パワー・トゥー・ガス)の一形態でもある同システムの実証運転を通して、東日本大震災の教訓の一つである「外部からの燃料調達に依存しない大容量非常用電源」技術の確立を行い、災害時に停電が発生しても安定した継続運転が可能な新たな浄水場の実現を目指す。

茂庭浄水場では、再生可能エネルギーとして太陽光発電を利用している。浄水場で、通常時の再生可能エネルギーの有効利用や非常時のエネルギーの長時間安定供給を実現するには、即応性、大容量性、耐久性、コンパクト性、高効率性を兼ね備えたエネルギー貯蔵装置が不可欠だが、これまでこのような条件を満たす単体のエネルギー貯蔵装置はなかった。

そこで「電力・水素エネルギー貯蔵システム」では、大容量性やコンパクト性に優れている水素貯蔵システムと、即応性、耐久性、高効率性に優れている電力貯蔵装置を組み合わせて、これを実現した。


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