内閣府は25日、公共施設等改革による経済・財政効果についての政策課題分析結果を公表した。この分析は、学校等の公共施設の集約・複合化による我が国全体の財政効果について、実際の取組事例を用いて定量的に明らかにするとともに、政府が施設を持たずに、公共サービスの提供を行う手法(公共サービスの「ソフト化」、以下「ソフト化」)の概念と具体的な手法、定性的な効果について明らかにするもの。
分析に当たっては、主な公共施設の人口当たりの延床面積の分布について、都市規模別(6区分)・提供サービス形態別(8区分)に整理。また、学校等の公共施設の集約・複合化に係る事例を都市規模別(6区分)、集約・複合化の手法別(集約・複合化の2区分、改修・改築の別)に合計16事例をサンプル抽出し、自治体からの提供データ(実績値)等に基づき、集約・複合化の取組実施後30年間の延床面積1平方メートル当たりのコスト削減額(累積)を事例ごとに算出した。
主な分析結果
主な分析結果をみると、主な公共施設の延べ床面積の約4~5割を学校施設(小・中学校)が占めている。
提供サービス形態別に人口当たりの延べ床面積の分布をみると、教育・保育サービス(小・中学校、保育所)は、他の公共施設に比べて、人口当たりの延べ床面積が最も大きかった。今後は、人口減少により、学校施設等を中心に人口当たりの延べ床面積が今以上に増加する見込みとなっている。
人口当たりの延床面積が大きいほど集約・複合化の余地が大きいとの前提に立てば、都市規模に関係なく、人口当たりの延床面積の大きい教育・保育サービスを中心に検討することが有用となる。特に学校施設(小・中学校)は、主な公共施設全体の約4~5割を占めることや、学童人口の減少が進展する中で、今後、人口当たりの延床面積が更に増加が見込まれることなどから、学校施設を対象とした財政効果試算を実施した。
学校等の公共施設の集約・複合化に係る事例を都市規模別(6区分)、集約・複合化の手法別(集約・複合化の2区分、回収・改築の別)に合計16事例をサンプル抽出し、自治体からの提供データ(実績値)等に基づき、集約・複合化の取組実施後30年間の延床面積1平方メートル当たりのコスト削減額(累積)を事例ごとに算出した結果、面積当たりのコスト削減額(30年間、累積)は、60.3万円/平方メートル~154.1万円/平方メートルに分布される(両端を除く最大・最少、14事例)。
この面積当たりのコスト削減額の幅を原単位にマクロのコスト削減効果を試算。その結果、学校等の集約・複合化の取組により、人口当たりの学校等の延床面積を全国平均まで縮小すると仮定した場合の日本全体のコスト削減効果(推計値)は、約11.3兆円~28.9兆円(年額約0.38兆円~0.96兆円)と見込まれる。全国平均値の代わりに都市規模別の平均値を当てはめて算出した場合、全体で合計約7.7兆円~19.7兆円(年額約0.26兆円~0・66兆円)のコスト削減効果が見込まれる。
「ソフト化」の可能性について調査した結果、すべての公共施設が対象となり、主な施設の合計延べ床面積総量は約3.6億平方メートルと見込まれる。このため、公共施設の「ソフト化」により、施設の維持・更新費の軽減等のコスト削減効果が見込まれるほか、民間企業の活躍の余地が広がると考えられる。