厚生労働省の有識者検討会は14日、高齢者が複数の薬を使用した際に起こる副作用などを抑える対策について、中間とりまとめを大筋で了承した。「適正使用ガイドライン」をまとめる必要があると指摘。今夏にも立ち上げるワーキンググループで検討を進め、2018年度末までに検討会の最終とりまとめと合わせて、策定していく方針だ。
厚労省によると、複数の慢性疾患を持つ高齢者は平均で6種類の薬を処方されているという。中間とりまとめでは、こうした患者について、副作用が強まるケースなど、有害事象が起こるリスクが高まると指摘。ガイドライン策定のほか、どういう組み合わせでどのような副作用が起こるのか、研究を進めることも求めた。
ガイドラインでは、急性期と回復期、外来と入院時と在宅療養時など、状況ごとに処方する薬剤数をどのように調整するかといった考えを示す。副作用が表れやすい薬の種類や、栄養補助食品なども含めた安全対策も提示。2つ以上の疾患を持つ高齢者は、複数の医療機関にかかっていることも多いため、医療機関同士の連携を密にすることで、薬剤数を減らす方法なども盛り込む予定だ。
■ 医療関係者・患者自身の意識改革も
また、多剤投与の適正化を進める際には、医療関係者の意識を変えていくことにも力を入れるよう要求。「患者を安心させるため」といった思いやりが、不必要な薬の処方につながっている可能性がある言及している。このため、医療関係者には、教育段階から適正使用に関する意識付けを行うようと指摘。「もっと薬がほしい」「薬を多くくれる医師が優秀な医師だ」と考えがちな患者へ、薬を減らすことの意義をわかりやすく説明するよう求めた。逆に患者側の意識改革も必要だとし、国民全体で多剤投与を見直す必要があるとした。
高齢者は、細胞内の水分減少や肝血流や肝細胞機能・腎血流の低下などから、薬剤の血中濃度が濃くなることが、これまでの研究でわかっている。