新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と(株)IHIは、海流エネルギーを利用して発電する新たな再生可能エネルギー技術である水中浮遊式海流発電システムの100キロワット級実証機「かいりゅう」をIHI横浜事業所で完成させた。
今夏、鹿児島県十島村口之島沖の黒潮海域で、実際に海流を利用した100キロワット規模の海流発電では世界初となる実証試験を行う。
NEDOは、エネルギーが強く、変動が少ない海流エネルギーについて、新しい再生可能エネルギー源として期待している。特に離島などでの実用化を目指すとともに、エネルギーセキュリティーへの貢献を目指す。
IHIは、今回の実証試験により発電性能や姿勢制御システムを検証し、海流エネルギーを有効かつ経済的に利用する水中浮遊式海流発電システムの2020年実用化を目指す。
海流や潮流、波力、海洋温度差など海洋のさまざまなエネルギーによる発電技術は、新たな再生可能エネルギーとして世界的に期待されている。特に、日本の沿岸付近には、世界的にも有数のエネルギーを持つ黒潮などの強い海流が、年間を通じて安定して流れている。
海流は、太陽光や風力に比べて昼夜や季節による変動が少ないことから、離島や系統連系などの制約により再生可能エネルギーの導入が困難な地域等におけるエネルギー源としての大きな可能性を有している。
NEDOは、2011年度から海流エネルギー発電の研究開発に取り組んできた。今回、NEDOとIHIは、海流発電の技術的な開発を完了し、100キロワット級実証機「かいりゅう」を完成させた。
実証試験場所の鹿児島県十島村口之島は、内閣府総合海洋政策推進事務局の海洋再生可能エネルギー実証フィールドに選定されている。計画では、黒潮が流れる口之島北側海域の沖合約5キロ、水深100メートルの地点に実証機を設置。串木野港沖合で7月下旬頃から1週間程度の曳航試運転を行った後、8月中旬頃から1週間程度の実証試験を予定している。
実証機の名称「かいりゅう」は、十島村の小中学生から公募した中から十島村村長が選定した。
水中浮遊式海流発電システムは、海底に設置したシンカー(錘)から浮体式発電装置を海中に係留し、海流の流れによって、タービン水車を回転することで発電する仕組み。主な特徴としては、1)昼夜や季節による変動が少ない安定した海流エネルギーを長期かつ連続的に利用することで、年間60%以上の高い設備利用率での発電が可能、2)海底から係留して海中に浮遊させることで、1000メートル級の大水深域での設置にも対応できる。波浪の影響を受けない安定した運用が可能で、船舶の航行に支障を及ぼさず、設置可能海域を広く設定することができる、3)左右2基の水中タービン水車を互いに逆方向に回転させることで、タービンの回転に伴う回転トルクを相殺でき、海中で安定した姿勢を保持し、高い効率で発電を行うことができる、4)浮力を調整することができるため、保守整備時には必要に応じて海上に浮上させることで、メンテナンスや修理を容易に行うことができる。